Qtプログラミング入門: QColor::fromHsl()で直感的な色指定

2025-05-26

QColor QColor::fromHsl() とは

QColor QColor::fromHsl() は、Qt フレームワークの QColor クラスが提供する静的(static)なコンビニエンス関数です。この関数を使うと、色を HSL (Hue, Saturation, Lightness) モデルで指定して QColor オブジェクトを生成することができます。

通常、QColor オブジェクトは赤、緑、青の3つの要素からなる RGB モデルで色を指定することが多いですが、HSL モデルは人間の色の知覚に近い方法で色を表現するため、直感的な色の調整に適しています。

HSL モデルについて

HSL は以下の3つの要素で構成されます。

  • L (Lightness: 輝度/明度):

    • 色の明るさを表します。通常は 0 から 255 の範囲の整数値です。
    • 0 は黒(光がない状態)を表し、255 は最も明るい状態(白に近づく)を表します。
  • S (Saturation: 彩度):

    • 色の鮮やかさを表します。通常は 0 から 255 の範囲の整数値です。
    • 0 に近いほど色が薄く(灰色に近く)なり、255 に近いほど色が鮮やかになります。
  • H (Hue: 色相):

    • 色の種類を表します。色の輪(カラーホイール)上の角度で表現され、通常は 0 から 359 の範囲の整数値です。
    • 赤が 0 度、緑が 120 度、青が 240 度に対応します。
    • 無彩色(灰色など)の場合、色相は意味を持たないか、-1 のような特殊な値で表されることがあります。

fromHsl() 関数の使い方

QColor::fromHsl() には、主に2つのオーバーロードがあります。

  1. QColor QColor::fromHsl(int h, int s, int l, int a = 255)

    • h: 色相 (Hue)。0 から 359 の範囲の整数値。
    • s: 彩度 (Saturation)。0 から 255 の範囲の整数値。
    • l: 輝度 (Lightness)。0 から 255 の範囲の整数値。
    • a: アルファ値 (Alpha)。色の不透明度。0(完全に透明)から 255(完全に不透明)の範囲の整数値。デフォルトは 255(不透明)です。


    QColor redColor = QColor::fromHsl(0, 255, 128); // 純粋な赤色 (不透明)
    QColor lightBlue = QColor::fromHsl(200, 150, 200, 100); // 明るい水色 (半透明)
    
  2. QColor QColor::fromHslF(qreal h, qreal s, qreal l, qreal a = 1.0)

    • h: 色相 (Hue)。0.0 から 1.0 の範囲の浮動小数点数(0.0 は 0 度、1.0 は 359 度に対応)。
    • s: 彩度 (Saturation)。0.0 から 1.0 の範囲の浮動小数点数。
    • l: 輝度 (Lightness)。0.0 から 1.0 の範囲の浮動小数点数。
    • a: アルファ値 (Alpha)。0.0(完全に透明)から 1.0(完全に不透明)の範囲の浮動小数点数。デフォルトは 1.0(不透明)です。


    QColor pureGreenF = QColor::fromHslF(120.0 / 360.0, 1.0, 0.5); // 純粋な緑色 (不透明)
    QColor darkPurpleF = QColor::fromHslF(280.0 / 360.0, 0.8, 0.2, 0.7); // 暗い紫色 (半透明)
    

    *qrealdouble または float のエイリアスです。Qt のバージョンやプラットフォームによって異なりますが、通常は double として扱われます。

特徴と利点

  • アルファチャネルのサポート: 透明度(アルファ値)も同時に指定できるため、半透明な色を簡単に作成できます。
  • RGB への変換: fromHsl() で生成された QColor オブジェクトは、内部的には RGB 値として保持されます。必要に応じて red(), green(), blue() などのメソッドで RGB 成分を取得したり、toHsl() メソッドで HSL 成分に戻すことも可能です。
  • 直感的な色の指定: HSL モデルは、色相、彩度、明度という人間の知覚に近い概念で色を表現するため、デザイナーが色のバリエーションを作成したり、色を調整したりする際に非常に便利です。
  • 静的関数: QColor クラスのインスタンスを作成せずに直接呼び出すことができます。
#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QColor>
#include <QPainter>
#include <QPixmap>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    // HSLを使って色を作成
    QColor myColor1 = QColor::fromHsl(0, 255, 128);  // 赤 (H:0, S:255, L:128)
    QColor myColor2 = QColor::fromHsl(120, 200, 100); // 緑 (H:120, S:200, L:100)
    QColor myColor3 = QColor::fromHsl(240, 150, 180, 150); // 青 (H:240, S:150, L:180), 半透明

    // QLabelに色を表示する例
    QLabel label1;
    QPixmap pixmap1(100, 50);
    pixmap1.fill(myColor1);
    label1.setPixmap(pixmap1);
    label1.setWindowTitle("Red HSL");
    label1.show();

    QLabel label2;
    QPixmap pixmap2(100, 50);
    pixmap2.fill(myColor2);
    label2.setPixmap(pixmap2);
    label2.setWindowTitle("Green HSL");
    label2.show();

    QLabel label3;
    QPixmap pixmap3(100, 50);
    QPainter painter(&pixmap3);
    painter.fillRect(pixmap3.rect(), QColor(200, 200, 200)); // 背景色
    painter.fillRect(pixmap3.rect(), myColor3); // 半透明な青を重ねる
    painter.end();
    label3.setPixmap(pixmap3);
    label3.setWindowTitle("Semi-transparent Blue HSL");
    label3.show();

    return app.exec();
}


QColor::fromHsl() は比較的単純な関数ですが、HSL カラーモデルの理解不足や引数の範囲の誤用によって問題が発生することがあります。

色が期待通りにならない (Hue, Saturation, Lightness の誤解)

問題
指定した HSL 値から生成された色が、思ったような色にならない。例えば、赤を指定したはずが灰色になったり、明るさが変わらなかったりする。

原因

  • 彩度が低い、または輝度が極端
    彩度 0(または 0.0)は常に灰色になり、色相は無視されます。輝度が 0(または 0.0)であれば常に黒、輝度が 255(または 1.0)であれば常に白になります。これらの極端な値では、色相や彩度の影響が小さくなります。
  • HSL 各要素の範囲の誤解
    • Hue (色相)
      0 から 359 の整数値、または 0.0 から 1.0 の浮動小数点数(fromHslF の場合)です。この範囲を外れた値を指定すると、予期しない色になったり、内部でクリッピングされたりします。
    • Saturation (彩度)
      0 から 255 の整数値、または 0.0 から 1.0 の浮動小数点数です。0 は無彩色(灰色)、255(または 1.0)は最も鮮やかな色です。
    • Lightness (輝度/明度)
      0 から 255 の整数値、または 0.0 から 1.0 の浮動小数点数です。0 は黒、255(または 1.0)は白です。

トラブルシューティング

  • 視覚的なデバッグ
    簡易的な GUI アプリケーションを作成し、スライダーなどで HSL の値をリアルタイムに変更できるようにすると、色の変化を視覚的に確認でき、デバッグが容易になります。
  • 段階的なテスト
    HSL の値を一つずつ変更しながら、色の変化を確認してください。特に、色相を 0,60,120,180,240,300 のような主要な色で試してみると、H がどのように色に影響するかを理解しやすくなります。
  • Qt ドキュメントの確認
    QColor::fromHsl() および QColor::fromHslF() の公式ドキュメントで、各引数の正確な範囲と意味を確認してください。

fromHsl() と fromHslF() の混同

問題
整数引数を受け取る fromHsl() と、浮動小数点引数を受け取る fromHslF() を誤って使用している。

原因

  • fromHsl() に浮動小数点数を渡したり、その逆を行ったりすると、コンパイラエラーになったり、意図しない暗黙の型変換によって予期しない結果になったりします。

トラブルシューティング

  • 引数の型
    渡す引数の型が、呼び出す関数に合致しているか確認してください。例えば、qreal 型(通常は double)の変数には fromHslF() を使用します。
  • 関数名の確認
    整数値を使う場合は fromHsl()、浮動小数点値を使う場合は fromHslF() を正確に呼び出しているか確認してください。

不透明度 (Alpha) の問題

問題
色が期待通りに半透明にならない、または完全に透明になってしまう。

原因

  • 描画時の問題
    QColor オブジェクト自体はアルファ値を持っていますが、その色が実際に半透明として描画されるかどうかは、描画を行う QPainter や、その描画先のウィジェット/ピックスマップの設定に依存します。例えば、QPainter::CompositionMode の設定によっては、半透明が正しく適用されない場合があります。
  • アルファ値の範囲の誤解
    • fromHsl() のアルファ値は 0(完全に透明)から 255(完全に不透明)の整数値です。
    • fromHslF() のアルファ値は 0.0(完全に透明)から 1.0(完全に不透明)の浮動小数点数です。

トラブルシューティング

  • 描画コンテキストの確認
    • QPainter を使用して描画する場合、QPainter::setCompositionMode() の設定を確認してください。通常は QPainter::CompositionMode_SourceOver がデフォルトで、半透明をサポートします。
    • 描画先の QPixmapQImage がアルファチャネルをサポートするフォーマット(例: QImage::Format_ARGB32_Premultiplied)であるか確認してください。
  • アルファ値の確認
    指定しているアルファ値が正しい範囲内にあるか、また意図する透明度に対応しているか確認してください。デフォルトは 255(または 1.0)で、不透明です。

QColor::isValid() の活用

問題
無効な HSL 値を渡してしまった場合に、予期しない動作やクラッシュが発生する。

原因

  • Qt のドキュメントによると、「For performance reasons, QColor mostly disregards illegal colors, and for that reason, the result of using an invalid color is undefined.」(パフォーマンス上の理由から、QColor は不正な色をほとんど無視するため、不正な色を使用した結果は未定義です。)とあります。つまり、範囲外の値を渡しても必ずしもエラーにならない代わりに、何が起こるか保証されません。

トラブルシューティング

  • 入力値のバリデーション
    fromHsl() を呼び出す前に、引数として渡す HSL 値が適切な範囲内にあることを自分でチェックするようにしてください。
  • isValid() のチェック
    QColor オブジェクトを生成した後、QColor::isValid() メソッドを呼び出して、生成された色が有効かどうかを確認することが推奨されます。
    QColor myColor = QColor::fromHsl(360, 255, 128); // Hは360で範囲外
    if (!myColor.isValid()) {
        qDebug() << "エラー: 無効な色が生成されました!";
        // エラー処理やデフォルト色の設定など
    }
    

比較と変換時の丸め誤差 (特に fromHslF())

問題
fromHslF() を使って生成した色を後で toHslF() で HSL に戻したり、RGB に変換したりすると、元の値とわずかに異なる場合がある。

原因

  • 浮動小数点演算には丸め誤差がつきものです。また、QColor の内部表現が 16 ビット整数であるため、浮動小数点値との間で変換が行われる際に微細な誤差が生じることがあります。
  • 整数値の利用
    可能な限り整数値の fromHsl() を利用することで、浮動小数点数による丸め誤差のリスクを減らすことができます。
  • 誤差の許容
    厳密な数値比較が必要な場合は、ある程度の誤差を許容する比較方法を使用してください。


QColor QColor::fromHsl() のプログラミング例

QColor::fromHsl() は、色を HSL (Hue, Saturation, Lightness) モデルで指定して QColor オブジェクトを生成するための便利な静的関数です。ここでは、いくつかの異なるシナリオでの使用例を紹介します。

例1: 基本的な HSL 色の作成

この例では、異なる HSL 値を使用して基本的な色を作成し、それらを QLabel の背景色として表示します。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QColor>
#include <QPixmap>
#include <QPainter>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);

    // 1. 基本的な赤色
    // H:0 (赤), S:255 (最大彩度), L:128 (中程度の明るさ)
    QColor redColor = QColor::fromHsl(0, 255, 128);
    QLabel *label1 = new QLabel("鮮やかな赤");
    QPixmap pixmap1(100, 50);
    pixmap1.fill(redColor);
    label1->setPixmap(pixmap1);
    layout->addWidget(label1);

    // 2. 落ち着いた緑色
    // H:120 (緑), S:150 (中程度の彩度), L:100 (少し暗め)
    QColor greenColor = QColor::fromHsl(120, 150, 100);
    QLabel *label2 = new QLabel("落ち着いた緑");
    QPixmap pixmap2(100, 50);
    pixmap2.fill(greenColor);
    label2->setPixmap(pixmap2);
    layout->addWidget(label2);

    // 3. パステル調の青色
    // H:240 (青), S:80 (低めの彩度), L:200 (明るめ)
    QColor pastelBlue = QColor::fromHsl(240, 80, 200);
    QLabel *label3 = new QLabel("パステル調の青");
    QPixmap pixmap3(100, 50);
    pixmap3.fill(pastelBlue);
    label3->setPixmap(pixmap3);
    layout->addWidget(label3);

    // 4. 透明度を持つ色 (半透明のオレンジ)
    // H:30 (オレンジ), S:255 (最大彩度), L:128 (中程度の明るさ), A:128 (半透明)
    QColor semiTransparentOrange = QColor::fromHsl(30, 255, 128, 128);
    QLabel *label4 = new QLabel("半透明のオレンジ");
    QPixmap pixmap4(100, 50);
    pixmap4.fill(QColor(200, 200, 200)); // 背景色(透明度が分かりやすいように)
    QPainter painter(&pixmap4);
    painter.fillRect(pixmap4.rect(), semiTransparentOrange);
    painter.end();
    label4->setPixmap(pixmap4);
    layout->addWidget(label4);

    window.setWindowTitle("QColor::fromHsl() の例");
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

  • 半透明な色を表示するためには、QPainter を使用して既存の背景の上に色を重ねて描画する必要があります。
  • QPixmap を作成し、fill() メソッドで色を塗りつぶして QLabel に表示しています。
  • QColor::fromHsl(h, s, l, a) は、それぞれ色相、彩度、輝度、アルファ値(不透明度)を整数値で指定します。

例2: fromHslF() を使用した浮動小数点値での色の作成

fromHslF() は、H, S, L, A の各要素を 0.0 から 1.0 の浮動小数点数で指定したい場合に便利です。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QColor>
#include <QPixmap>
#include <QPainter>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>
#include <QDebug> // デバッグ出力用

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);

    // 1. 純粋なマゼンタ (fromHslF)
    // H: 300度 (0.833), S: 1.0 (最大), L: 0.5 (中程度)
    QColor magentaF = QColor::fromHslF(300.0 / 360.0, 1.0, 0.5);
    QLabel *label1 = new QLabel("純粋なマゼンタ (F)");
    QPixmap pixmap1(100, 50);
    pixmap1.fill(magentaF);
    label1->setPixmap(pixmap1);
    layout->addWidget(label1);

    // 2. 明るい灰色 (fromHslF)
    // H: 無視される (彩度が0), S: 0.0 (無彩色), L: 0.8 (明るい)
    QColor lightGrayF = QColor::fromHslF(0.0, 0.0, 0.8);
    QLabel *label2 = new QLabel("明るい灰色 (F)");
    QPixmap pixmap2(100, 50);
    pixmap2.fill(lightGrayF);
    label2->setPixmap(pixmap2);
    layout->addWidget(label2);

    // 3. HSL値の取得とデバッグ出力
    QColor testColor = QColor::fromHslF(0.4, 0.7, 0.6, 0.9); // 例としてシアン系の色
    qreal h, s, l, a;
    testColor.getHslF(&h, &s, &l, &a);
    qDebug() << "テストカラー HSLF: H=" << h << ", S=" << s << ", L=" << l << ", A=" << a;
    qDebug() << "テストカラー RGB: R=" << testColor.red() << ", G=" << testColor.green() << ", B=" << testColor.blue() << ", A=" << testColor.alpha();


    QLabel *label3 = new QLabel("デバッグ出力された色");
    QPixmap pixmap3(100, 50);
    pixmap3.fill(testColor);
    label3->setPixmap(pixmap3);
    layout->addWidget(label3);


    window.setWindowTitle("QColor::fromHslF() の例");
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

  • getHslF() を使用して、作成された QColor オブジェクトから HSL 成分を浮動小数点数で取得できることを示しています。これにより、色が正しく生成されたかを確認できます。
  • fromHslF() は、より細かな色の指定が可能です。特に、色相は 0.0 から 1.0 で表現されるため、角度(0∼359)を 360 で割って正規化する必要があります。

例3: ループを使ったグラデーションの生成

fromHsl() をループ内で使用して、色相を変化させることでグラデーションを生成する例です。

#include <QApplication>
#include <QLabel>
#include <QColor>
#include <QPixmap>
#include <QPainter>
#include <QVBoxLayout>
#include <QWidget>

int main(int argc, char *argv[])
{
    QApplication app(argc, argv);

    QWidget window;
    QVBoxLayout *layout = new QVBoxLayout(&window);

    QLabel *gradientLabel = new QLabel("HSL グラデーション");
    gradientLabel->setFixedSize(360, 50); // 色相の範囲に合わせて幅を360に

    QPixmap gradientPixmap(360, 50);
    QPainter painter(&gradientPixmap);

    // 色相を0から359まで変化させるループ
    for (int h = 0; h < 360; ++h) {
        // 彩度と輝度は一定に保ち、色相のみ変化させる
        QColor color = QColor::fromHsl(h, 255, 128); // 最大彩度、中程度の明るさ
        painter.setPen(color); // 1ピクセル幅のペンで描画
        painter.drawLine(h, 0, h, 49); // 各色相で垂直な線を描画
    }

    painter.end();
    gradientLabel->setPixmap(gradientPixmap);
    layout->addWidget(gradientLabel);

    window.setWindowTitle("HSL グラデーションの例");
    window.show();

    return app.exec();
}

解説

  • QPainter を使用して、生成された色で QPixmap 上に1ピクセル幅の垂直な線を描画することで、色のグラデーションが表現されます。
  • h の値で fromHsl() を呼び出し、異なる色を生成します。
  • for ループで色相 h を 0 から 359 まで変化させます。

これらの例をコンパイルして実行するには、Qt プロジェクトを作成し、.pro ファイルに QT += gui widgets を追加し、C++ ソースコードをプロジェクトに含めます。

.pro ファイルの例

QT       += core gui widgets

SOURCES  += main.cpp

# より新しいQtバージョンでは以下も検討
# CONFIG += c++17 # または c++14, c++11
qmake -project
qmake
make # または nmake (Windows), jom (Qt Creator)
./your_executable_name


QColor QColor::fromHsl() の代替方法

QColor::fromHsl() は HSL モデルで色を表現するのに便利ですが、Qt の QColor クラスは他にも多様な色の指定方法を提供しています。

RGB (Red, Green, Blue) モデルの使用

最も一般的で基本的な色の指定方法です。赤、緑、青の光の三原色の組み合わせで色を表現します。

  • 既存の QColor オブジェクトの RGB 値を変更する setRgb() 関数
    一度作成した QColor オブジェクトの RGB 値を後から変更できます。

    QColor myColor; // デフォルトでは無効な色
    myColor.setRgb(200, 100, 50); // 茶色を設定
    
  • QColor::fromRgbF(qreal r, qreal g, qreal b, qreal a = 1.0) 静的関数
    RGB 値とアルファ値を 0.0 から 1.0 の浮動小数点数で指定したい場合に便利です。

    QColor yellowColor = QColor::fromRgbF(1.0, 1.0, 0.0); // 純粋な黄
    
  • QColor::fromRgb(int r, int g, int b, int a = 255) 静的関数
    コンストラクタと同様に、RGB 値とアルファ値で色を作成します。

    QColor greenColor = QColor::fromRgb(0, 255, 0); // 純粋な緑
    
  • QColor::QColor(int r, int g, int b, int a = 255) コンストラクタ
    RGB 値を 0 から 255 の整数で指定して QColor オブジェクトを作成します。アルファ値(不透明度)も 0 から 255 で指定できます。

    QColor redColor(255, 0, 0);       // 純粋な赤
    QColor blueColor(0, 0, 255, 128); // 半透明の青
    

HSV (Hue, Saturation, Value) モデルの使用

HSL と似ていますが、明るさの概念が Lightness (輝度) ではなく Value (明度) で表現されます。HSL の Lightness が 0.0 (黒) から 1.0 (白) の範囲で明るさを調整するのに対し、HSV の Value は 0.0 (黒) から 1.0 (最大明度) の範囲で調整します。HSV は特に、彩度や明度を変化させつつ色相を維持したい場合に役立ちます。

  • 既存の QColor オブジェクトの HSV 値を変更する setHsv() 関数

    QColor myColor;
    myColor.setHsv(60, 200, 150); // オレンジ系の色を設定
    
  • QColor::fromHsvF(qreal h, qreal s, qreal v, qreal a = 1.0) 静的関数
    HSV 値とアルファ値を浮動小数点数で指定します。H は 0.0 から 1.0 (角度 0∼359 を 360 で割った値)、S, V, A も 0.0 から 1.0 です。

    QColor darkGreen = QColor::fromHsvF(0.33, 0.8, 0.4); // 暗い緑
    
  • QColor::fromHsv(int h, int s, int v, int a = 255) 静的関数
    HSV 値を整数で指定して QColor オブジェクトを作成します。H は 0 から 359、S と V は 0 から 255、A は 0 から 255 です。

    QColor brightBlue = QColor::fromHsv(240, 255, 255); // 明るい青
    

CMYK (Cyan, Magenta, Yellow, Black) モデルの使用

主に印刷業界で使われる減法混色モデルです。

  • 既存の QColor オブジェクトの CMYK 値を変更する setCmyk() 関数

    QColor myColor;
    myColor.setCmyk(100, 50, 0, 0); // シアンとマゼンタの混合
    
  • QColor::fromCmykF(qreal c, qreal m, qreal y, qreal k, qreal a = 1.0) 静的関数
    CMYK 値とアルファ値を浮動小数点数で指定します。

    QColor customCyan = QColor::fromCmykF(0.8, 0.1, 0.0, 0.0);
    
  • QColor::fromCmyk(int c, int m, int y, int k, int a = 255) 静的関数
    CMYK 値を 0 から 255 の整数で指定します。

    QColor printBlack = QColor::fromCmyk(0, 0, 0, 255); // 純粋な黒 (K=255)
    

名前付き色の使用

Qt は、HTML や CSS で使われるような標準的な色名をサポートしています。

  • Qt::GlobalColor 列挙型の使用
    Qt には、頻繁に使用される基本的な色が Qt::GlobalColor 列挙型として定義されています。

    QColor globalRed = Qt::red;
    QColor globalBlue = Qt::blue;
    
  • QColor::setNamedColor(const QString &name) 関数
    既存の QColor オブジェクトの色を名前で設定します。

    QColor myColor;
    myColor.setNamedColor("DarkGreen");
    
  • QColor::QColor(const QString &name) コンストラクタ
    色名を文字列で指定して QColor オブジェクトを作成します。

    QColor namedColor1("red");
    QColor namedColor2("LightSkyBlue");
    

16進数文字列 (QRgb) での色指定

HTML や CSS でよく使われる #RRGGBB または #AARRGGBB 形式の16進数文字列を数値として表現する QRgb 型を使用して色を指定することもできます。

  • QColor::fromRgb(QRgb rgb) 静的関数
    QRgb 値から QColor を作成します。

    QColor colorFromQRgb = QColor::fromRgb(0x0000FF); // 純粋な青
    
  • QColor::QColor(QRgb rgb) コンストラクタ
    QRgbunsigned int のエイリアスで、色の成分をパックした形式です。

    // #FF0000 (不透明な赤)
    QColor hexRed(0xFF0000);
    
    // #8000FF00 (半透明の緑)
    QColor hexSemiGreen(0x8000FF00);
    
  • 色の明るさや暗さを相対的に調整したい場合
    QColor::lighter()QColor::darker() といった便利な関数も活用できます。
  • CSS や HTML の色指定を扱う場合
    名前付き色や16進数形式が便利です。
  • 印刷関連のアプリケーション
    CMYK モデルが適切です。
  • HSV で考えるのが自然な場合
    fromHsv() を使用します。デザイナーによっては HSV の方が直感的に感じることもあります。
  • RGB 値がすでに分かっている場合
    QColor(r, g, b) コンストラクタや fromRgb() がシンプルで分かりやすいです。
  • HSL で考えるのが自然な場合
    fromHsl() が最も適しています。例えば、色相を保ちつつ明るさや鮮やかさを調整したい場合などです。