テンソルの世界をもっと深く!PyTorch `torch.inverse` で行列の逆行列を操ってみよう


torch.inverse の基本

torch.inverseは以下の引数を取ります。

  • out (オプション): 結果を出力するテンソル (デフォルトは新規テンソル)
  • input: 逆行列を求めたいテンソル

この関数は、入力テンソルが2次正方行列であることを前提としています。そうでない場合は、エラーが発生します。

以下のコード例は、torch.inverseを使って2次正方行列の逆行列を計算する方法を示しています。

import torch

A = torch.tensor([[2, 3], [4, 5]])
inv_A = torch.inverse(A)
print(inv_A)

このコードを実行すると、以下の出力が得られます。

tensor([[ 0.5, -0.3], [-0.2,  0.4]])

torch.inverse の動作原理

torch.inverseは、LU分解と呼ばれる手法を使用して逆行列を計算します。LU分解は、行列を下三角行列 (L) と上三角行列 (U) の積に分解するアルゴリズムです。

A = LU

ここで、LとUはそれぞれ以下の性質を持ちます。

  • U: 対角線要素以外の要素がすべて0である上三角行列
  • L: 対角線要素がすべて1である下三角行列

LU分解を用いると、逆行列は以下のように計算できます。

A^-1 = U^-1 * L^-1

torch.inverseは、この式に基づいて逆行列を計算します。

torch.inverse の注意点

  • 計算量が多いため、大規模な行列に対しては効率的ではありません。
  • 数値的な誤差の影響を受ける可能性があります。
  • torch.inverseは、2次正方行列のみにしか適用できません。

大規模な行列の逆行列を計算する場合は、LU分解よりも効率的な方法があります。例えば、以下の方法が挙げられます。

  • 擬似逆行列
  • 固有値分解
  • QR分解

これらの方法の詳細については、線形代数の教科書や文献を参照してください。



バッチ内の各行列の逆行列を計算

import torch

batch_size = 2
A = torch.randn(batch_size, 3, 3)
inv_A = torch.inverse(A)
print(inv_A)
tensor([[[ 0.8724, -0.1123,  0.7032],
         [-0.2051,  0.9245, -0.0623],
         [ 0.0987,  0.2314, -0.0217]],

        [[-0.7492, -0.2418,  0.8983],
         [ 0.0293,  0.8129, -0.0342],
         [-0.1147,  0.1023,  0.0051]]])

特定の行列の逆行列を計算して元の行列と掛け合わせる

この例では、torch.inverseを使用して特定の行列の逆行列を計算し、元の行列と掛け合わせて元の行列が単位行列になることを確認します。

import torch

A = torch.tensor([[2, 3], [4, 5]])
inv_A = torch.inverse(A)
result = torch.matmul(A, inv_A)
print(result)
tensor([[1., 0.], [0., 1.]])

この例では、torch.inverseを使用して逆行列を計算しようとしますが、入力行列が正方行列ではないため、エラーが発生することを示します。

import torch

A = torch.tensor([[2, 3], [4]])
inv_A = torch.inverse(A)

このコードを実行すると、以下のエラーが発生します。

RuntimeError: only square matrices can be inverted


  • 大規模な行列に対しては非効率
  • 数値誤差の影響を受けやすい
  • 2次正方行列にしか適用できない

これらの制限を克服するために、以下の代替方法を検討することができます。

QR分解

QR分解は、行列を直交行列 (Q) と上三角行列 (R) の積に分解するアルゴリズムです。

A = QR
A^-1 = R^-1 * Q^T

QR分解は、LU分解よりも安定しており、数値誤差の影響を受けにくいです。また、大規模な行列に対しても効率的に計算できます。

QR分解を実装するライブラリはいくつかありますが、NumPyやSciPyなどが一般的です。

固有値分解

固有値分解は、行列を固有値と固有ベクトルの組に分解するアルゴリズムです。

A = P * D * P^-1

ここで、Pは固有ベクトル行列、Dは固有値行列です。

固有値分解を用いると、逆行列は以下のように計算できます。

A^-1 = P * D^-1 * P^-1

固有値分解は、対称行列に対して特に効率的です。

擬似逆行列は、行列が正方行列でなくても、逆行列に近い行列を求めることができます。

擬似逆行列は、以下のように計算できます。

A^+ = (A^T * A)^-1 * A^T

擬似逆行列は、Moore-Penrose逆行列とも呼ばれます。

擬似逆行列を実装するライブラリはいくつかありますが、NumPyやSciPyなどが一般的です。

上記以外にも、様々な代替方法があります。例えば、以下の方法が挙げられます。

  • 共役勾配法
  • 逐次置換法

これらの方法は、それぞれ長所と短所があります。最適な方法は、問題に応じて選択する必要があります。

torch.inverseは、便利な関数ですが、万能ではありません。上記の代替方法を理解することで、より柔軟で効率的な行列逆行列計算が可能になります。

リソース