ニューラルネットワークの軽量化と解釈可能性の向上: PyTorch ln_structuredによる構造化剪定


torch.nn.utils.prune.ln_structured は、PyTorchにおけるニューラルネットワークの剪定(Pruning)機能の一つで、Lpノルムに基づいて構造化された剪定を実行します。これは、ニューラルネットワークのパラメータの一部を削除することで、モデルのサイズと計算量を削減する手法です。

仕組み

ln_structured は、以下の手順で剪定を行います。

  1. 重要度スコアの計算: 剪定対象のパラメータに対して、各要素の重要度を表す重要度スコアを計算します。デフォルトでは、パラメータ値そのものが重要度スコアとして使用されますが、必要に応じてカスタムの重要度スコアを指定することもできます。
  2. チャンネルの選択: 重要度スコアに基づいて、剪定するチャンネルを選択します。具体的には、Lpノルムが最も小さいチャンネルをamount個選択します。Lpノルムは、p乗の和の平方根で表される値であり、パラメータベクトルの大きさの指標として用いられます。
  3. マスクの作成: 選択されたチャンネルに対応する要素が0となるマスクを作成します。
  4. パラメータの更新: マスクを使って、剪定対象のパラメータを更新します。具体的には、マスクの1である要素のみを残し、0である要素は削除します。

コード例

import torch
from torch.nn.utils import prune

# モデルと剪定対象のパラメータを定義
model = MyModel()
name = 'weight'

# 剪定器を作成
pruner = prune.LnStructured(model, name, amount=0.2, n=2)

# 訓練を実行
optimizer = torch.optim.Adam(model.parameters())
for epoch in range(10):
    # ...
    optimizer.zero_grad()
    loss = model(data)
    loss.backward()
    optimizer.step()

    # 剪定を実行
    pruner.prune()

利点

  • モデルの解釈可能性を向上できる可能性がある
  • 過学習を抑制できる可能性がある
  • モデルのサイズと計算量を削減できる
  • すべてのモデルに対して有効とは限らない
  • 剪定の量が多すぎると、モデルの精度が低下する可能性がある
  • 剪定は、モデルの解釈可能性を向上させる可能性がありますが、必ずしもそうとは限りません。
  • 剪定は、モデルの精度と計算量とのトレードオフを考慮する必要があります。
  • ln_structured 以外にも、l1_unstructuredmagnitude などの剪定方法が用意されています。


import torch
from torch import nn
from torch.nn.utils import prune

# モデルと剪定対象のパラメータを定義
model = nn.Sequential(
    nn.Conv2d(3, 16, kernel_size=3),
    nn.ReLU(),
    nn.Conv2d(16, 32, kernel_size=3),
    nn.ReLU(),
    nn.MaxPool2d(2),
    nn.Flatten(),
    nn.Linear(128, 10)
)
name = 'weight'

# 剪定器を作成
pruner = prune.LnStructured(model, name, amount=0.2, dim=1, n=2)  # 'weight' パラメータのチャンネル方向に剪定

# 訓練を実行
optimizer = torch.optim.Adam(model.parameters())
for epoch in range(10):
    # ...
    optimizer.zero_grad()
    loss = model(data)
    loss.backward()
    optimizer.step()

    # 剪定を実行
    pruner.prune()

説明

  • n=2 は、L2ノルムを使用することを指定します。
  • dim=1 は、チャンネル方向に剪定することを指定します。
  • amount=0.2 は、剪定するチャンネルの割合を 20% に設定します。
  • このコードでは、nn.Conv2d 層の weight パラメータに対して剪定を行います。
  • 剪定を行う前に、モデルの精度を検証することが重要です。
  • 剪定の量や方法を変更することで、モデルの精度と計算量のバランスを調整できます。
  • このコードはあくまで例であり、実際の使用状況に合わせて変更する必要があります。


  • filter_unstructured: フィルタ全体を剪定します。個々のチャンネルを剪定する ln_structured よりも粗い剪定方法ですが、計算量を大幅に削減できます。
  • magnitude: 各パラメータ要素の大きさに基づいて剪定を行います。ln_structured と同様ですが、L2ノルムではなく L1ノルムを使用します。
  • l1_unstructured: 各パラメータ要素の絶対値に基づいて剪定を行います。ln_structured よりもスパースなモデルを生成する可能性がありますが、精度が低下する可能性もあります。

非構造化剪定手法

  • random_unstructured: ランダムな順序でパラメータを剪定します。global_unstructured と同様ですが、スパースなモデルを生成する可能性があります。
  • global_unstructured: ランダムに選択されたパラメータを剪定します。構造化剪定よりもシンプルですが、モデルの精度が大きく低下する可能性があります。
  • モデルの解釈可能性: 剪定方法によっては、モデルの解釈可能性が向上する場合があります。モデルの解釈可能性が重要の場合は、個々のチャンネルを剪定する ln_structured などの手法を選択する必要があります。
  • 計算量: 剪定方法によって、計算量が大きく異なる場合があります。計算量を削減することが最優先の場合は、global_unstructured などの非構造化剪定手法を選択する必要があります。
  • モデルのサイズ: 剪定方法によって、モデルのサイズが大きく異なる場合があります。モデルサイズを小さくすることが最優先の場合は、filter_unstructured などの粗い剪定手法を選択する必要があります。
  • モデルの精度: 剪定方法によって、モデルの精度が大きく異なる場合があります。精度が最優先の場合は、ln_structured などの精度維持に重点を置いた手法を選択する必要があります。