PyTorchでCPUデバイス上の計算を同期する:『torch.cpu.synchronize』の解説と代替方法
torch.cpu.synchronize
は、PyTorchにおいてCPUデバイス上のすべてのキューにおけるカーネルの完了を待機する関数です。CUDAデバイス上での同期操作である torch.cuda.synchronize
と似ていますが、CPUデバイスに特化しています。
機能
- デバイス間でのデータ転送操作の完了確認にも利用できます。
- 処理の流れを制御し、後続の操作が同期されたカーネルの結果を参照できるようにします。
- CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機します。
引数
device
(torch.device または int, オプション): 同期対象のデバイスを指定します。省略した場合、現在のデバイスが使用されます。CPUデバイスのみ有効です。
注意点
- PyTorchは自動的に同期を挿入するため、明示的な同期操作は必ずしも必要ではありません。
- 同期操作はパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、必要最低限の使用に留めることが推奨されます。
- CPUデバイスには単一のグローバルキューしか存在しないため、
device
引数は無視されます。
import torch
# CPUデバイス上にテンソルを作成
x = torch.randn(4, device="cpu")
# 計算を実行
y = x + x
# CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機
torch.cpu.synchronize()
# 結果を確認
print(y)
- CUDAデバイス上での同期操作については、
torch.cuda.synchronize
を参照してください。
CPUデバイス上のテンソル演算の同期
import torch
# CPUデバイス上にテンソルを作成
x = torch.randn(4, device="cpu")
# 計算を実行
y = x + x
# CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機
torch.cpu.synchronize()
# 結果を確認
print(y)
この例では、CPUデバイス上でテンソル x
を作成し、x + x
演算を実行します。その後、torch.cpu.synchronize
を使用して、CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機します。最後に、計算結果 y
を表示します。
CPUとGPU間でのデータ転送の同期
import torch
# CPUデバイス上にテンソルを作成
x = torch.randn(4)
# GPUデバイスにテンソルを転送
x = x.to("cuda")
# GPUデバイス上で計算を実行
y = x + x
# CPUデバイスに結果を転送
y = y.cpu()
# CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機
torch.cpu.synchronize()
# 結果を確認
print(y)
この例では、CPUデバイス上でテンソル x
を作成し、GPUデバイスに転送します。その後、GPUデバイス上で x + x
演算を実行し、結果をCPUデバイスに転送します。最後に、torch.cpu.synchronize
を使用して、CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機し、結果 y
を表示します。
ベンチマークにおける同期
import torch
import time
# CPUデバイス上にテンソルを作成
x = torch.randn(1000, device="cpu")
# 計算を実行
start = time.time()
for _ in range(100):
y = x + x
end = time.time()
print(f"計算時間: {end - start}秒")
# CPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機
torch.cpu.synchronize()
# ベンチマーク結果を測定
start = time.time()
for _ in range(100):
y = x + x
end = time.time()
print(f"ベンチマーク時間: {end - start}秒")
この例では、CPUデバイス上でテンソル x
を作成し、x + x
演算を100回実行します。計算時間とベンチマーク時間を測定するために、time.time()
関数を使用します。torch.cpu.synchronize
を使用して、ベンチマーク実行前にCPUデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機することで、より正確なベンチマーク結果を得ることができます。
- ベンチマークを行う場合は、同期操作の影響を考慮する必要があります。
- 同期操作はパフォーマンスに影響を与える可能性があるため、必要最低限の使用に留めることが推奨されます。
明示的なストリーム管理
PyTorchでは、計算を非同期に実行するために「ストリーム」と呼ばれる機能を提供しています。torch.cuda.Stream
と同様に、torch.cpu.Stream
を使用してCPUデバイス上のキューを個別に管理することで、同期操作を回避できます。
具体的な方法は以下の通りです。
- CPUストリームを作成します。
- 計算をそのストリームに割り当てます。
- ストリームの完了を待機します。
import torch
# CPUストリームを作成
stream = torch.cpu.Stream()
# 計算をストリームに割り当て
with torch.cuda.stream(stream):
x = torch.randn(4, device="cpu")
y = x + x
# ストリームの完了を待機
stream.synchronize()
# 結果を確認
print(y)
torch.device.synchronize()の使用
PyTorch 1.10以降では、torch.device.synchronize()
関数が導入されました。この関数は、指定されたデバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機します。torch.cpu.synchronize
とほぼ同等の機能ですが、より汎用的なインターフェースを提供します。
import torch
# CPUデバイスを指定
device = torch.device("cpu")
# デバイス上のすべてのキューで実行中のすべてのカーネルの完了を待機
device.synchronize()
# 計算を実行
x = torch.randn(4, device="cpu")
y = x + x
# 結果を確認
print(y)
同期を回避する
多くの場合、明示的な同期操作は必要ありません。PyTorchは、計算の依存関係を自動的に解析し、必要なタイミングで同期を挿入します。ただし、以下の状況では、同期操作を明示的に挿入することで、パフォーマンスを向上させることができる場合があります。
- 計算の再現性を確保する必要がある場合
- ベンチマークを実行する場合
- 異なるデバイス間でデータを転送する場合
- パフォーマンスの最適化を行う場合は、ベンチマークを実施して、各方法の影響を比較することが重要です。
- 具体的な代替方法は、状況に応じて選択する必要があります。
- 同期操作は、ハードウェアやPyTorchのバージョンによって異なるパフォーマンス特性を持つ可能性があります。