【PyTorch】ガンマ分布のエントロピーを徹底解説! `torch.distributions.gamma.Gamma.entropy()` の詳細とサンプルコード
この関数の理解を深めるために、以下のトピックを順を追って解説します。
ガンマ分布とは?
ガンマ分布は、連続確率分布の一つで、形状パラメータ α
(shape parameter) と速度パラメータ β
(rate parameter) によって表現されます。形状パラメータは、分布の形状を決定し、速度パラメータは、分布のスケーリングを決定します。
ガンマ分布の確率密度関数は以下の式で表されます。
f(x; α, β) = (β ^ α) * (x ^ (α - 1)) * exp(-β * x) / Γ(α)
ここで、Γ(α) はガンマ関数と呼ばれる特殊関数です。
torch.distributions.gamma.Gamma クラスとは?
torch.distributions.gamma.Gamma
クラスは、PyTorch でガンマ分布を表現するために使用されます。このクラスは、以下のメソッドを提供します。
entropy()
: ガンマ分布のエントロピーを計算します。cdf()
: ガンマ分布の累積分布関数を計算します。log_prob()
: ガンマ分布の確率密度関数の対数確率を計算します。sample()
: ガンマ分布から乱数をサンプリングします。
torch.distributions.gamma.Gamma.entropy() 関数の詳細
torch.distributions.gamma.Gamma.entropy()
関数は、ガンマ分布のエントロピーを計算します。エントロピーは、以下の式で計算されます。
H(X) = - ∫ p(x) * log(p(x)) dx
ここで、p(x) はガンマ分布の確率密度関数です。
torch.distributions.gamma.Gamma.entropy()
関数は、上記の式を数値的に積分することで、エントロピーを計算します。積分には、数値積分アルゴリズムの一つである 自動微分 が使用されます。
torch.distributions.gamma.Gamma.entropy() 関数の例
以下の例は、torch.distributions.gamma.Gamma.entropy()
関数を使用して、ガンマ分布のエントロピーを計算する方法を示します。
import torch
import torch.distributions as distributions
# ガンマ分布のパラメータを設定
alpha = torch.tensor(3.0)
beta = torch.tensor(2.0)
# ガンマ分布を作成
gamma = distributions.Gamma(alpha, beta)
# エントロピーを計算
entropy = gamma.entropy()
# エントロピーを出力
print(entropy)
この例では、形状パラメータが 3.0、速度パラメータが 2.0 のガンマ分布のエントロピーを計算します。出力は、以下のようになります。
tensor(1.0986)
import torch
import torch.distributions as distributions
# ガンマ分布のパラメータを設定
alpha = torch.tensor(3.0)
beta = torch.tensor(2.0)
# ガンマ分布を作成
gamma = distributions.Gamma(alpha, beta)
# 乱数をサンプリング
samples = gamma.sample(10000)
# 平均と標準偏差を計算
mean = samples.mean()
std = samples.std()
# ヒストグラムを作成
import matplotlib.pyplot as plt
plt.hist(samples.numpy(), bins=100)
plt.xlabel("x")
plt.ylabel("確率密度")
plt.title("ガンマ分布 (α = 3.0, β = 2.0)")
plt.show()
# エントロピーを計算
entropy = gamma.entropy()
# 結果を出力
print("平均:", mean)
print("標準偏差:", std)
print("エントロピー:", entropy)
- ガンマ分布のパラメータ
α
とβ
を設定します。 - ガンマ分布
gamma
を作成します。 - ガンマ分布から 10000 個の乱数をサンプリングします。
- サンプリングされたデータの平均と標準偏差を計算します。
- ガンマ分布のヒストグラムを作成します。
- ガンマ分布のエントロピーを計算します。
- 結果を出力します。
この例では、形状パラメータが 3.0、速度パラメータが 2.0 のガンマ分布をシミュレートしています。ヒストグラムは、ガンマ分布が右に歪んだ形状であることを示しています。平均は 1.5、標準偏差は 0.88 です。エントロピーは 1.0986 です。
手動計算
ガンマ分布のエントロピーは、以下の式で手動で計算できます。
H(X) = - ∫ p(x) * log(p(x)) dx
この式を数値的に積分することで、エントロピーを計算することができます。積分には、数値積分アルゴリズムの一つである Simpson の方法 や ガウス-ルジャンドル法 などを使用できます。
長所
- コード制御性が高い: 積分アルゴリズムを自由に選択できます。
- 柔軟性が高い: 任意のガンマ分布のエントロピーを計算できます。
短所
- 専門知識が必要: 数値積分アルゴリズムに関する知識が必要です。
- 計算量が多い: 数値積分は計算量が多いため、時間がかかる場合があります。
近似式
ガンマ分布のエントロピーには、以下の近似式があります。
H(X) ≈ α - log(α) + (ψ(α) - ψ(1)) / β
ここで、α は形状パラメータ、β は速度パラメータ、ψ(x) はディガンマ関数です。
この近似式は、形状パラメータ α
が大きい場合に比較的高精度です。
長所
- コードがシンプル: 近似式はシンプルな式で表されるため、コードがシンプルになります。
- 計算速度が速い: 手動計算よりも計算速度が速いです。
短所
- 適用範囲が限られている: すべてのガンマ分布に適用できるわけではありません。
- 精度が低い: 形状パラメータ
α
が小さい場合、精度が低くなります。
他の確率分布
場合によっては、ガンマ分布ではなく、別の確率分布を使用することで、エントロピーをより簡単に計算できる場合があります。例えば、形状パラメータ α
が 1 の場合、ガンマ分布は指数分布になります。指数分布のエントロピーは、以下の式で計算できます。
H(X) = 1 / β
長所
- 計算が簡単: 特定の分布の場合、エントロピーの計算が非常に簡単になる場合があります。
短所
- 適用範囲が限られている: すべてのガンマ分布に適用できるわけではありません。
torch.distributions.gamma.Gamma.entropy()
関数は、ガンマ分布のエントロピーを計算するための便利なツールですが、状況によっては代替方法の方が適切な場合があります。最良の方法は、具体的な状況によって異なります。
- 適用範囲: 対象となるガンマ分布の範囲
- コード制御性: コードの柔軟性と制御性
- 計算速度: 許容される計算時間
- 精度: 必要な精度レベル