PyTorch分散学習のヒント!`torch.distributed.checkpoint.StorageReader.set_up_storage_reader()`で分散チェックポイントを読み込む際の注意点
分散チェックポイントとは?
分散チェックポイントは、PyTorch におけるモデルの保存と読み込みを、複数のワーカー間で並列に行う機能です。大規模なモデルを扱う場合、単一のワーカーでチェックポイントファイルを処理するのは時間がかかり、非効率的です。分散チェックポイント機能を使用すると、複数のワーカーでチェックポイントファイルを分割して読み込み、処理を並列化することで、読み込み時間を大幅に短縮することができます。
StorageReader クラスとは?
StorageReader
クラスは、分散チェックポイント機能における重要な役割を担うクラスです。このクラスは、チェックポイントファイルのメタデータを読み込み、各ワーカーが読み込むべきファイルとデータの範囲を決定します。また、各ワーカーが効率的にファイルを読み込めるように、分散ストレージシステムとのインターフェースを提供します。
set_up_storage_reader() 関数の役割
set_up_storage_reader()
関数は、StorageReader
インスタンスを初期化し、分散チェックポイントファイルを読み込む準備を整える役割を担います。この関数は、以下の引数を受け取ります。
rank
: 現在のワーカーのランクworld_size
: 分散訓練に参加するワーカーの数checkpoint_id
: チェックポイントファイルの一意なIDstorage_path
: チェックポイントファイルの場所を指定するパス
set_up_storage_reader()
関数は、以下の処理を実行します。
- 指定された
storage_path
にあるチェックポイントファイルのメタデータを読み込みます。 - メタデータから、チェックポイントファイルの内容と、各ワーカーが読み込むべきファイルとデータの範囲を決定します。
- 分散ストレージシステムとの接続を確立し、各ワーカーが効率的にファイルを読み込めるように準備します。
set_up_storage_reader()
関数は、以下のコードのように使用されます。
from torch.distributed.checkpoint import StorageReader
storage_path = "/path/to/checkpoint"
checkpoint_id = "my-checkpoint"
world_size = 8
rank = 4
storage_reader = StorageReader(storage_path, checkpoint_id, world_size, rank)
storage_reader.set_up_storage_reader()
このコードを実行すると、storage_reader
インスタンスが初期化され、分散チェックポイントファイルを読み込む準備が整います。
torch.distributed.checkpoint.StorageReader.set_up_storage_reader()
関数は、PyTorch の分散チェックポイント機能において、分散的に保存されたチェックポイントファイルを読み込むための重要な関数です。この関数は、複数のワーカー間で協調してチェックポイントファイルを効率的に読み込み、モデルの状態を復元するために使用されます。
import torch
import torch.distributed as dist
from torch.distributed.checkpoint import StorageReader
def load_checkpoint(storage_path, checkpoint_id, world_size, rank):
# 分散環境を初期化する
dist.init_process_group()
# StorageReader インスタンスを作成する
storage_reader = StorageReader(storage_path, checkpoint_id, world_size, rank)
# StorageReader を初期化する
storage_reader.set_up_storage_reader()
# モデルをロードする
model = load_model()
# モデルの状態を StorageReader から復元する
storage_reader.load(model.state_dict())
# 分散環境を終了する
dist.destroy_process_group()
def load_model():
# モデルを定義する
model = torch.nn.Linear(10, 10)
# モデルを初期化する
model.load_state_dict(torch.load("model.pth"))
return model
if __name__ == "__main__":
storage_path = "/path/to/checkpoint"
checkpoint_id = "my-checkpoint"
world_size = 8
rank = 4
load_checkpoint(storage_path, checkpoint_id, world_size, rank)
このコードは以下の処理を実行します。
dist.init_process_group()
関数を使用して、分散環境を初期化します。StorageReader
インスタンスを作成し、storage_path
、checkpoint_id
、world_size
、rank
を引数として渡します。storage_reader.set_up_storage_reader()
関数を実行して、StorageReader を初期化します。load_model()
関数を実行して、モデルを定義し、初期化します。storage_reader.load(model.state_dict())
関数を実行して、モデルの状態を StorageReader から復元します。dist.destroy_process_group()
関数を実行して、分散環境を終了します。
このコードはあくまで一例であり、実際の使用状況に合わせて変更する必要があります。
- チェックポイントファイルを保存する前に、モデルの状態を正規化する必要があります。
- モデルの状態を保存する前に、モデルをトレーニングモードから評価モードに変更する必要があります。
- このコードは、単一のGPU上で実行することを前提としています。複数のGPU上で分散訓練を行う場合は、
torch.distributed
モジュールの他の機能を使用する必要があります。
手動でチェックポイントファイルを分割して読み込む
この方法は、最もシンプルな代替方法です。各ワーカーがチェックポイントファイルの一部を読み込み、手動でモデルの状態を復元します。この方法は、以下の利点があります。
- 外部ライブラリに依存しない
- コードがシンプルで理解しやすい
しかし、以下の欠点もあります。
- スケーラビリティが低い
- 複数のワーカー間でデータを効率的に同期する必要がある
- 実装が複雑で、エラーが発生しやすい
第三者製のライブラリを使用する
分散チェックポイント機能をより簡単に実装するために、torch.distributed
モジュール以外にも様々なライブラリが提供されています。代表的なライブラリは以下の通りです。
これらのライブラリは、torch.distributed.checkpoint
モジュールよりも高度な分散チェックポイント機能を提供しており、以下の利点があります。
- スケーラビリティが高い
- 複数のワーカー間でデータを効率的に同期する
- コードがシンプルで、エラーが発生しにくい
- ライブラリによっては、特定のハードウェアやソフトウェアプラットフォームでのみ動作する
- 外部ライブラリに依存する
- コードが複雑で理解しにくい
カスタムの分散ストレージソリューションを使用する
独自の分散ストレージソリューションを使用することで、分散チェックポイント機能を完全に制御することができます。この方法は、以下の利点があります。
- パフォーマンスを最大限に高めることができる
- 独自のニーズに最適化できる
- 完全にカスタマイズ可能
- デバッグが難しい
- 専門知識が必要
- 実装が複雑で、時間と労力が必要
分散チェックポイント機能を使用しない
分散チェックポイント機能を使用せずに、各ワーカーで個別にチェックポイントファイルを保存するという方法もあります。この方法は、以下の利点があります。
- 外部ライブラリに依存しない
- コードがシンプルで理解しやすい
- スケーラビリティが低い
- 複数のワーカー間でデータを同期する必要がある
最適な代替方法の選択
最適な代替方法は、状況によって異なります。以下の要素を考慮する必要があります。
- パフォーマンス要件
- 開発者のスキルと経験
- 使用するハードウェアとソフトウェア
- モデルの規模