PostgreSQL「Binary String: substring」でよくあるエラーと解決策

2025-05-31

bytea 型のデータに対して、特定の範囲のバイト列(サブストリング)を抽出するために substring 関数が利用できます。これは、通常のテキスト文字列から部分文字列を抽出する substring 関数と同様の概念ですが、文字単位ではなくバイト単位で処理が行われます。

substring 関数の構文 (bytea型の場合)

substring 関数は、bytea 型のバイナリ文字列に対して以下の構文で使用されます。

SUBSTRING(string bytea, start integer [, length integer ])
  • length: 抽出するバイト数(正の整数)です。この引数はオプションであり、省略された場合は start 位置から文字列の最後までが抽出されます。
  • start: 抽出を開始するバイトの位置(1から始まる整数)です。
  • string: 抽出元となる bytea 型のバイナリ文字列です。

具体例

例えば、bytea 型のデータが \x1234567890 (これは16進数表記で、5バイトのバイナリデータを示します)であるとします。

  1. 先頭から3バイトを抽出する

    SELECT SUBSTRING(E'\\x1234567890'::bytea, 1, 3);
    

    結果: \x123456

  2. 2バイト目から4バイトを抽出する

    SELECT SUBSTRING(E'\\x1234567890'::bytea, 2, 4);
    

    結果: \x34567890

  3. 3バイト目から最後まで抽出する(length を省略)

    SELECT SUBSTRING(E'\\x1234567890'::bytea, 3);
    

    結果: \x567890

  • 範囲外の指定: startlength が文字列の範囲を超える場合でもエラーにはなりません。存在する部分までが返されるか、空のバイト列が返されます。
  • 1ベースインデックス: start 引数は1から始まるインデックスです。
  • バイト単位の処理: bytea 型の substring は、文字エンコーディングを考慮せず、純粋にバイト列として処理します。UTF-8などのマルチバイト文字を含む文字列を bytea に変換して substring を使うと、意図しない結果になる可能性があるため注意が必要です。テキストとして部分文字列を扱いたい場合は、text 型の substring 関数を使用するか、bytea を適切なエンコーディングの text に変換してから処理する必要があります。


bytea 型に対する substring 関数は、バイナリデータをバイト単位で扱うため、テキスト文字列の操作とは異なる注意点があります。

bytea 型ではないデータ型に substring を使用しようとするエラー

最も一般的なエラーの一つは、bytea 型ではないデータ型(textvarchartimestamp など)に bytea 用の substring 関数を使おうとすることです。

エラーメッセージの例
ERROR: function substring(timestamp without time zone, integer, integer) does not exist HINT: No function matches the given name and argument types. You might need to add explicit type casts.

原因
substring 関数は、引数のデータ型によって異なるバージョン(オーバーロード)が存在します。bytea 型の substringbytea 型の引数を期待しますが、別の型の値を渡してしまっています。

トラブルシューティング/解決策

  • 適切な関数の使用
    テキストデータとして部分文字列を扱いたい場合は、text 型用の substring 関数を使用します。 例: SELECT SUBSTRING('my_text_string', 1, 3); timestamp 型など、日付/時刻型の部分抽出であれば、EXTRACTTO_CHAR などの適切な関数を使用します。
  • 明示的なキャスト
    もし、意図的にバイナリデータとして扱いたいのであれば、値を bytea 型に明示的にキャストします。 例: SELECT SUBSTRING('my_text_string'::bytea, 1, 3);
  • データ型の確認
    substring を適用しようとしているカラムや値のデータ型が本当に bytea であるかを確認してください。

マルチバイト文字の扱いに関する誤解(エンコーディングの問題)

bytea 型は純粋なバイト列であり、文字エンコーディングを考慮しません。そのため、テキストデータ(特にUTF-8などのマルチバイト文字)を bytea にキャストして substring を行うと、意図しない結果になることがあります。

問題の例
UTF-8で「あいうえお」という文字列は、各文字が3バイトで表現されます。 SELECT 'あいうえお'::bytea;\xe38182e38184e38186e38188e3818a (15バイト) SELECT SUBSTRING('あいうえお'::bytea, 1, 3);\xe38182 (これは「あ」のバイト列なので問題ないように見えますが、もし「あ」の途中で切れたりすると問題になります) SELECT SUBSTRING('あいうえお'::bytea, 2, 3);\x8182e3 (これは「あ」の途中から始まり、「い」の途中までとなり、意味のある文字にはなりません)

原因
bytea 型はエンコーディングを無視してバイト単位で処理するため、文字の境界で substring を行わないと、壊れた文字が生成される可能性があります。

トラブルシューティング/解決策

  • エンコーディング変換
    やむを得ず bytea でテキストを扱う場合でも、convert_from()encode() / decode() 関数を使って、バイト列を適切な文字エンコーディングのテキストに変換してから substring を適用することを検討します。 例:
    SELECT SUBSTRING(CONVERT_FROM(your_bytea_column, 'UTF8'), 1, 5);
    
    ただし、これは変換コストがかかるため、設計段階でデータ型を適切に選択することが最善です。
  • テキストとして扱うべきか検討
    抽出したいデータがテキスト情報であれば、bytea ではなく textvarchar 型を使用し、通常の substring 関数を使用します。 例: SELECT SUBSTRING('あいうえお', 1, 2); (これは「あい」を返します)

オフセットや長さの指定ミス

substringstart (開始位置) や length (長さ) の指定が間違っている場合、期待通りの結果が得られません。

問題の例

  • 負の値を指定してしまう。
  • length が文字列の残りの長さよりも長すぎる。
  • start が1から始まることを忘れて0を指定してしまう。

原因
substring 関数の仕様を誤解しているか、計算ミスによるものです。PostgreSQLのsubstringは1ベースインデックスです。

トラブルシューティング/解決策

  • length の省略
    length を省略すると start から最後までが抽出されるので、意図しない場合は明示的に長さを指定します。
  • start の注意
    start に0を指定すると、bytea の場合はエラーにはなりませんが、空のバイト列が返される場合があります(バージョンによる)。通常は1から指定します。
  • テストデータでの検証
    小さなテストデータで、startlength のさまざまな組み合わせを試して、期待通りの結果が得られるか確認します。
  • ドキュメントの再確認
    substring 関数の構文と引数の意味を再度確認します。

bytea 型のデータは、クライアントへの表示形式やSQLでのリテラル表現に「エスケープ形式」と「16進数形式」の2種類があります。この違いを理解していないと、データの挿入や比較、substring の結果の解釈で混乱が生じることがあります。

問題の例
SELECT '\x48656c6c6f'::bytea; (16進数形式)は「Hello」 SELECT E'\\101\\102\\103'::bytea; (エスケープ形式、オクタル値)は「ABC」

これらは見た目が異なりますが、内部的には同じバイナリデータを表します。

原因
bytea_output 設定や、SQLリテラルの書き方による違いを理解していないため。

  • 外部からのデータ入力
    アプリケーションから bytea データを挿入する場合、ドライバーやフレームワークが適切にバイナリデータを扱えるように設定されているか確認します。多くの場合、バイト配列として渡し、DBドライバーが適切な形式に変換してくれます。
  • 一貫したリテラル表現
    SQLクエリ内で bytea のリテラル値を記述する際は、一貫して \x 形式(16進数)を使用することをお勧めします。これは可読性が高く、直感的です。
  • bytea_output 設定の確認
    SHOW bytea_output;
    
    通常は hex (16進数) が推奨されますが、古いシステムでは escape (エスケープ) が設定されていることがあります。


SQLコマンドでの例

まず、基本的なSQLコマンドでの substring の使い方を再確認します。

-- テーブルの作成
CREATE TABLE binary_data_examples (
    id SERIAL PRIMARY KEY,
    data_name VARCHAR(100),
    binary_content BYTEA
);

-- サンプルデータの挿入
-- 16進数リテラルでバイナリデータを挿入(例: 'Hello' のASCIIコードを16進数で)
INSERT INTO binary_data_examples (data_name, binary_content) VALUES
('Image Header', E'\\x89504e470d0a1a0a'), -- PNGファイルのヘッダっぽいデータ
('Audio Snippet', E'\\x4144494646000000'), -- 適当なオーディオデータの一部
('Mixed Content', E'\\x48656c6c6f20E38182E38184E38186'); -- 'Hello 'と「あいう」のUTF-8バイト列

例1: 特定のオフセットと長さでバイナリデータを抽出する

SELECT
    id,
    data_name,
    binary_content,
    SUBSTRING(binary_content, 1, 4) AS first_4_bytes, -- 先頭から4バイト
    SUBSTRING(binary_content, 5, 2) AS fifth_and_sixth_bytes -- 5バイト目から2バイト
FROM
    binary_data_examples
WHERE
    data_name = 'Image Header';

出力例

 id |   data_name  |  binary_content  | first_4_bytes | fifth_and_sixth_bytes
----+--------------+------------------+---------------+-----------------------
  1 | Image Header | \x89504e470d0a1a0a | \x89504e47    | \x0d0a
(1 row)

例2: オフセット以降の残りの全てを抽出する

SELECT
    id,
    data_name,
    binary_content,
    SUBSTRING(binary_content, 3) AS from_third_byte_onwards -- 3バイト目から最後まで
FROM
    binary_data_examples
WHERE
    data_name = 'Audio Snippet';

出力例

 id |   data_name   | binary_content | from_third_byte_onwards
----+---------------+----------------+-------------------------
  2 | Audio Snippet | \x4144494646000000 | \x494646000000
(1 row)

例3: テキストとして解釈する場合の注意点

Mixed Content の例で、テキストとバイナリの区別の重要性を示します。

SELECT
    id,
    data_name,
    binary_content,
    -- これはバイナリデータとしてsubstring
    SUBSTRING(binary_content, 1, 6) AS binary_substring_hello,
    SUBSTRING(binary_content, 7, 9) AS binary_substring_jp_chars, -- 「あいう」はUTF-8で9バイト
    -- bytesをUTF-8とみなしてテキストに変換後、テキストとしてsubstring
    CONVERT_FROM(SUBSTRING(binary_content, 1, 6), 'UTF8') AS text_substring_hello,
    CONVERT_FROM(SUBSTRING(binary_content, 7, 9), 'UTF8') AS text_substring_jp_chars
FROM
    binary_data_examples
WHERE
    data_name = 'Mixed Content';

出力例

 id |   data_name   |         binary_content          | binary_substring_hello | binary_substring_jp_chars | text_substring_hello | text_substring_jp_chars
----+---------------+---------------------------------+------------------------+---------------------------+----------------------+-------------------------
  3 | Mixed Content | \x48656c6c6f20e38182e38184e38186 | \x48656c6c6f20        | \xe38182e38184e38186     | Hello                | あいう
(1 row)

この例から、bytea 型の substring はバイト列をそのまま切り出すのに対し、CONVERT_FROM を使ってテキストに変換してからテキストの substring を使うと、文字単位での処理になることがわかります。

各言語からPostgreSQLに接続し、bytea 型のデータを取得して substring を実行する例です。

Pythonでの例

Pythonのpsycopg2ライブラリを使用します。bytea 型のデータはPythonのbytes型として扱われます。

import psycopg2

conn = None
try:
    # データベース接続情報 (適宜変更してください)
    conn = psycopg2.connect(
        host="localhost",
        database="your_database",
        user="your_user",
        password="your_password"
    )
    cur = conn.cursor()

    # サンプルデータの挿入 (もしテーブルが空の場合)
    cur.execute("""
        INSERT INTO binary_data_examples (data_name, binary_content) VALUES
        ('Python Data', E'\\xdeadbeef01020304'),
        ('Another Python Data', E'\\xabcdef0987654321')
        ON CONFLICT (data_name) DO NOTHING;
    """)
    conn.commit()

    # 1. SUBSTRING関数をSQLクエリ内で使用する例
    cur.execute("""
        SELECT
            id,
            data_name,
            binary_content,
            SUBSTRING(binary_content, 1, 4) AS first_4_bytes
        FROM
            binary_data_examples
        WHERE
            data_name = 'Python Data';
    """)
    row = cur.fetchone()
    if row:
        print("\n--- Python: SQLのSUBSTRING関数を使用 ---")
        print(f"ID: {row[0]}")
        print(f"Name: {row[1]}")
        print(f"Original Bytea: {row[2].hex()}") # bytesオブジェクトを16進数文字列で表示
        print(f"First 4 bytes (from DB): {row[3].hex()}")

    # 2. byteaデータをPythonに取得後、Pythonのbytesオブジェクトのslicingを使用する例
    cur.execute("""
        SELECT
            binary_content
        FROM
            binary_data_examples
        WHERE
            data_name = 'Another Python Data';
    """)
    binary_data_from_db = cur.fetchone()[0] # bytesオブジェクトとして取得

    print("\n--- Python: bytesオブジェクトのスライスを使用 ---")
    print(f"Original Bytea (from DB): {binary_data_from_db.hex()}")
    
    # Pythonのバイト列スライスは0ベースインデックス
    # PostgreSQLのSUBSTRING(data, 1, 4) は Pythonの data[0:4] に相当
    # PostgreSQLのSUBSTRING(data, 5, 2) は Pythonの data[4:6] に相当
    # PostgreSQLのSUBSTRING(data, 3) は Pythonの data[2:] に相当
    
    python_sliced_data = binary_data_from_db[2:6] # 3バイト目から4バイト分(0から数えて2番目から6番目の手前まで)
    print(f"Sliced in Python (bytes[2:6]): {python_sliced_data.hex()}")

except Exception as e:
    print(f"Error: {e}")
finally:
    if conn:
        cur.close()
        conn.close()

Pythonのポイント

  • Pythonのスライシングは0ベースインデックスであるため、PostgreSQLの1ベースのSUBSTRINGの引数と混同しないように注意が必要です。SUBSTRING(data, start, length) は、Pythonでは data[start-1 : start-1+length] に相当します。
  • SQLクエリ内で SUBSTRING を使用することもできますし、bytes オブジェクトとしてPythonに取得した後、Pythonのbytes型のスライシング機能([start:end])を使って部分バイト列を抽出することもできます。
  • psycopg2bytea 型のデータをPythonのbytes型として自動的に扱います。

Javaでの例

JavaのJDBCドライバーを使用します。bytea 型のデータはJavaのbyte[](バイト配列)として扱われます。

import java.sql.*;

public class BinarySubstringExample {

    public static void main(String[] args) {
        Connection conn = null;
        PreparedStatement pstmt = null;
        ResultSet rs = null;

        try {
            // データベース接続 (適宜変更してください)
            // PostgreSQL JDBC Driverのjarファイルをクラスパスに追加してください
            Class.forName("org.postgresql.Driver");
            conn = DriverManager.getConnection(
                "jdbc:postgresql://localhost:5432/your_database",
                "your_user",
                "your_password"
            );
            conn.setAutoCommit(false); // トランザクション管理を有効に

            // サンプルデータの挿入 (もしテーブルが空の場合)
            String insertSql = "INSERT INTO binary_data_examples (data_name, binary_content) VALUES (?, ?) ON CONFLICT (data_name) DO NOTHING;";
            pstmt = conn.prepareStatement(insertSql);
            
            pstmt.setString(1, "Java Data");
            pstmt.setBytes(2, new byte[]{(byte)0xDE, (byte)0xAD, (byte)0xBE, (byte)0xEF, (byte)0x11, (byte)0x22, (byte)0x33, (byte)0x44});
            pstmt.executeUpdate();

            pstmt.setString(1, "Another Java Data");
            pstmt.setBytes(2, new byte[]{(byte)0xAA, (byte)0xBB, (byte)0xCC, (byte)0xDD, (byte)0x99, (byte)0x88, (byte)0x77, (byte)0x66});
            pstmt.executeUpdate();
            conn.commit();

            // 1. SUBSTRING関数をSQLクエリ内で使用する例
            System.out.println("\n--- Java: SQLのSUBSTRING関数を使用 ---");
            String selectSql = "SELECT id, data_name, binary_content, SUBSTRING(binary_content, 1, 4) AS first_4_bytes FROM binary_data_examples WHERE data_name = 'Java Data'";
            pstmt = conn.prepareStatement(selectSql);
            rs = pstmt.executeQuery();

            if (rs.next()) {
                int id = rs.getInt("id");
                String name = rs.getString("data_name");
                byte[] originalBytes = rs.getBytes("binary_content");
                byte[] first4Bytes = rs.getBytes("first_4_bytes");

                System.out.println("ID: " + id);
                System.out.println("Name: " + name);
                System.out.println("Original Bytea: " + bytesToHex(originalBytes));
                System.out.println("First 4 bytes (from DB): " + bytesToHex(first4Bytes));
            }

            // 2. byteaデータをJavaに取得後、Javaのバイト配列操作を使用する例
            System.out.println("\n--- Java: バイト配列操作を使用 ---");
            selectSql = "SELECT binary_content FROM binary_data_examples WHERE data_name = 'Another Java Data'";
            pstmt = conn.prepareStatement(selectSql);
            rs = pstmt.executeQuery();

            if (rs.next()) {
                byte[] binaryDataFromDb = rs.getBytes("binary_content");

                System.out.println("Original Bytea (from DB): " + bytesToHex(binaryDataFromDb));
                
                // Javaのバイト配列コピーは0ベースインデックス
                // PostgreSQLのSUBSTRING(data, 1, 4) は Javaの Arrays.copyOfRange(data, 0, 4) に相当
                // PostgreSQLのSUBSTRING(data, 5, 2) は Javaの Arrays.copyOfRange(data, 4, 6) に相当
                // PostgreSQLのSUBSTRING(data, 3) は Javaの Arrays.copyOfRange(data, 2, data.length) に相当
                
                // 3バイト目から4バイト分を抽出 (0から数えて2番目から6番目の手前まで)
                byte[] javaSlicedData = new byte[4];
                System.arraycopy(binaryDataFromDb, 2, javaSlicedData, 0, 4); 
                System.out.println("Sliced in Java (bytes[2] for 4 bytes): " + bytesToHex(javaSlicedData));
            }

        } catch (SQLException e) {
            e.printStackTrace();
        } catch (ClassNotFoundException e) {
            e.printStackTrace();
        } finally {
            try {
                if (rs != null) rs.close();
                if (pstmt != null) pstmt.close();
                if (conn != null) conn.close();
            } catch (SQLException e) {
                e.printStackTrace();
            }
        }
    }

    // バイト配列を16進数文字列に変換するヘルパーメソッド
    private static String bytesToHex(byte[] bytes) {
        StringBuilder sb = new StringBuilder();
        for (byte b : bytes) {
            sb.append(String.format("%02x", b));
        }
        return sb.toString();
    }
}
  • Javaのバイト配列インデックスも0ベースです。PostgreSQLの1ベースのインデックスと混同しないように注意が必要です。
  • Pythonと同様に、SQL内で SUBSTRING を使うか、Javaに取得したbyte[]に対して System.arraycopy()Arrays.copyOfRange() といったメソッドを使って部分配列を抽出できます。
  • JDBCドライバーは bytea 型のデータをJavaのbyte[](バイト配列)として取得します。


アプリケーション側での処理

最も一般的な代替手段は、PostgreSQLから bytea 型のデータをそのままアプリケーション側に取得し、アプリケーション言語の機能で部分文字列を抽出する方法です。

メリット

  • 型安全
    bytea から取得したデータは、言語のバイト列型として扱われるため、意図しない型変換エラーを防ぎやすいです。
  • デバッグのしやすさ
    アプリケーション側のコードで処理するため、デバッグが容易な場合があります。
  • オフロード
    データベースサーバーの負荷を軽減できます。特に複雑なロジックや繰り返し処理が必要な場合。
  • 柔軟性
    アプリケーション言語の豊富な文字列/バイト列操作関数やライブラリを利用できます。

デメリット

  • メモリ使用量
    アプリケーション側で大きなバイナリデータを一時的にメモリに読み込む必要があるため、メモリ消費が増える可能性があります。
  • ネットワークオーバーヘッド
    必要な部分だけを抽出するのではなく、全てのバイナリデータをデータベースからアプリケーションに転送する必要があるため、大きなデータの場合、ネットワークトラフィックが増加し、パフォーマンスが低下する可能性があります。

具体的な例

  • C#
    byte[] に対して Array.Copy()LinqSkip().Take() を使用します。
  • Java
    byte[] に対して System.arraycopy()Arrays.copyOfRange() を使用します。
  • Python
    bytes 型の slicing (data[start:end]) を使用します。

substring 以外にも、bytea 型を扱う上で役立つ関数がいくつかあります。

  • encode(data bytea, format text) / decode(string text, format text)

    • bytea データをテキスト形式(hex, base64, escape)にエンコード/デコードします。
    • これは直接的な substring の代替ではありませんが、バイナリデータを人間が読みやすい形式に変換したり、特定のシステム間でデータをやり取りする際に役立ちます。
    • 例えば、base64 エンコードされたテキスト文字列としてデータベースに保存し、アプリケーション側でデコードしてから部分文字列を操作することも理論的には可能ですが、これはパフォーマンスやデータ管理の点で推奨されません。
    • 例: SELECT encode(E'\\x123456'::bytea, 'hex');123456
  • overlay(bytes bytea PLACING newsubstring bytea FROM start integer [ FOR count integer ])

    • 元のバイト列の指定した範囲を、新しいバイト列で置き換えます。
    • これも抽出ではなく変更ですが、特定の場所のバイト列を更新するシナリオで使えます。
    • 例: SELECT overlay(E'\\x1234567890'::bytea placing E'\\xAA'::bytea from 2 for 1);\x12aa567890
  • position(substring bytea IN bytes bytea)

    • 指定したサブバイト列が、元のバイト列の中で最初に出現する位置(1から始まるインデックス)を返します。見つからない場合は0を返します。
    • 部分文字列を抽出する前に、特定のパターンを検索する際に役立ちます。
    • 例: SELECT position(E'\\x5678'::bytea IN E'\\x1234567890'::bytea);3
  • set_byte(bytea, integer, integer)

    • 指定したオフセットの1バイトを、指定した値に置き換えます。(オフセットは0から始まります)
    • これは部分文字列の抽出とは異なりますが、バイナリデータの一部分を変更する際に使用できます。
    • 例: SELECT set_byte(E'\\x123456'::bytea, 1, 0xAA);\x12aa56
    • 指定したオフセットの1バイトを整数値として取得します。(オフセットは0から始まります)
    • 特定の1バイトだけが必要な場合に効率的です。
    • 例: SELECT get_byte(E'\\x123456'::bytea, 1);52 (16進数の34は10進数で52)

PostgreSQLには、bytea 型の他に、非常に大きなバイナリデータ(通常1GBを超えるようなデータ)を扱うためのラージオブジェクト機能があります。これは、bytea とは異なり、データが特別なシステムテーブルに保存され、OID (Object ID) で参照されます。

メリット

  • トランザクション管理
    通常のデータと同様にトランザクション内で管理されます。
  • ストリーミングアクセス
    データを部分的に読み書きする際に、ストリーミングアクセスが可能です。これにより、全てのデータをメモリに読み込む必要がなくなり、非常に大きなファイルを効率的に扱えます。

デメリット

  • 性能
    小さなデータでは bytea よりもオーバーヘッドが大きくなる可能性があります。
  • 複雑性
    bytea よりもAPIが複雑になります。特にアプリケーション側からの操作では、特別なライブラリや関数(例: pg_read(), pg_write())を使用する必要があります。

substring との関連
ラージオブジェクトから直接 substring 関数を使用することはできません。しかし、ラージオブジェクトのストリーミングAPIを使って、必要なバイト範囲だけを読み込み、アプリケーション側で処理することで、substring と同等の効果を得ることができます。

プログラミング言語での例 (概念)
JavaのJDBCドライバには LargeObjectManager が提供されており、これを使ってラージオブジェクトの読み書きやシーク(移動)を行うことができます。必要な範囲だけを読み込むことで、部分的なデータアクセスを実現します。

// Java (概念的なコード、完全な動作には追加のセットアップが必要)
// LargeObjectManager を使用して、ラージオブジェクトから部分的に読み込む
// bytea の substring と同等の処理をLarge Objectで行う
try {
    conn.setAutoCommit(false); // Large Objectはトランザクション内でアクセスする必要がある
    LargeObjectManager lom = ((PGConnection)conn).getLargeObjectAPI();
    long oid = 12345; // 既存のLarge ObjectのOID
    LargeObject obj = lom.open(oid, LargeObject.READ);

    int offset = 100; // 読み込み開始オフセット (0ベース)
    int length = 50;  // 読み込む長さ
    byte[] buffer = new byte[length];

    obj.seek(offset, LargeObject.SEEK_SET); // オフセットに移動
    obj.read(buffer, 0, length); // 指定した長さだけ読み込む

    // buffer に substring されたデータが入る
    obj.close();
    conn.commit();
} catch (SQLException e) {
    e.printStackTrace();
}

byteasubstring は、データベース側でバイナリデータの一部を抽出する標準的かつ効率的な方法です。しかし、ユースケースによっては、以下の代替手段を検討することも重要です。

  • 非常に大きなバイナリデータ(数百MB~GB単位)で、部分的なストリーミングアクセスが必要な場合
    PostgreSQLのラージオブジェクト機能。
  • 特定の1バイトの取得や変更が必要な場合
    get_byte()set_byte()
  • 小~中規模のバイナリデータで、柔軟な処理やDB負荷軽減が必要な場合
    アプリケーション側でのバイト列操作。