Juliaで回転処理を効率化!LinearAlgebra.rotate!()の代替手段とパフォーマンス比較

2025-04-26

LinearAlgebra.rotate!() は、Juliaの LinearAlgebra モジュールで提供される関数で、与えられたベクトルや行列を指定された角度だけ回転させるために使われます。 ! (エクスクラメーションマーク) が付いていることからわかるように、この関数は破壊的 (in-place) 操作を行います。つまり、元のオブジェクトそのものを変更します。

この関数は、主に以下の2つの使い方があります。

ベクトルの回転

using LinearAlgebra

v = [1.0, 0.0]  # 回転させたいベクトル
θ = π/4         # 回転角度 (ラジアン)

R = RotMatrix(θ) # 回転行列を作成

rotate!(v, R)

println(v) # 結果: [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]

この例では、[1.0, 0.0] というベクトルを π/4 (45度) だけ回転させています。 まず、RotMatrix(θ) で回転行列 R を作成し、rotate!(v, R) でベクトル v を回転させています。 v の値が直接変更されていることに注意してください。

行列の回転 (各列ベクトルを回転)

using LinearAlgebra

A = [1.0 0.0; 0.0 1.0] # 回転させたい行列
θ = π/2         # 回転角度 (ラジアン)

R = RotMatrix(θ) # 回転行列を作成

rotate!(A, R)

println(A) # 結果: [1.1102230246251565e-16 -1.0; 1.0 1.1102230246251565e-16]

この例では、2x2の行列 A の各列ベクトルを π/2 (90度) だけ回転させています。 rotate!(A, R) によって、行列 A の各列が回転されます。

  • LinearAlgebra モジュール
    rotate!() を使うためには、using LinearAlgebraLinearAlgebra モジュールを読み込む必要があります。
  • 次元
    ベクトルの回転では、2次元または3次元のベクトルを使用できます。行列の回転では、各列が回転されます。
  • 回転行列
    回転角度はラジアンで指定します。 RotMatrix を使って回転行列を作成する必要があります。
  • 破壊的操作
    rotate!() は元のオブジェクトを変更します。もし元のオブジェクトを保持したい場合は、コピーを作成してから rotate!() を使用する必要があります (例: v_rotated = rotate!(copy(v), R))。


MethodError (メソッドエラー)

  • 解決策
    • rotate!() の第一引数は、回転させたいベクトルまたは行列である必要があります。
    • 第二引数は、RotMatrix で作成された回転行列である必要があります。
    • ベクトルを回転させる場合は、2次元または3次元のベクトルを使用します。
    • 行列を回転させる場合は、各列が回転されることに注意してください。
    • 型を確認するために typeof(v)typeof(R) などで変数の型を調べましょう。
  • 原因
    rotate!() に渡す引数の型が正しくない場合に発生します。例えば、ベクトルや行列の代わりにスカラー値を渡したり、回転行列の代わりに別の型のオブジェクトを渡したりした場合に起こります。

DimensionMismatch (次元の不一致)

  • 解決策
    • 回転させたいベクトルの次元と一致する次元の回転行列を作成します。2次元ベクトルなら RotMatrix(θ)、3次元ベクトルなら RotMatrix(θ, [axis]) を使用します。
    • 行列の場合は、各列ベクトルが回転されるため、回転行列の次元は、回転させたい行列の行数と一致する必要があります。
  • 原因
    回転行列の次元と、回転させたいベクトルまたは行列の次元が一致しない場合に発生します。例えば、2次元の回転行列を3次元のベクトルに適用しようとした場合に起こります。

UndefVarError (未定義変数エラー)

  • 解決策
    using LinearAlgebra をコードの先頭に追加して、LinearAlgebra モジュールを読み込みます。
  • 原因
    rotate!()RotMatrix を使用する前に、LinearAlgebra モジュールを読み込んでいない場合に発生します。

意図しない結果 (値が変わらない、または間違った方向に回転するなど)

  • 解決策
    • 回転角度はラジアンで指定します。度数で指定する場合は、deg2rad() 関数を使ってラジアンに変換します。
    • RotMatrix の引数が正しいか確認します。
    • 元のオブジェクトを保持したい場合は、copy() 関数を使ってコピーを作成してから rotate!() を適用します (例: v_rotated = rotate!(copy(v), R))。
    • 回転の方向が意図した通りになっているか、回転行列の作成や角度の符号を見直しましょう。
  • 原因
    • 回転角度の単位が間違っている (度数ではなくラジアンである必要があります)。
    • 回転行列の作成方法が間違っている。
    • 破壊的 (in-place) 操作である rotate!() を使っているため、元の変数が変更されていることに気づいていない。

パフォーマンスの問題

  • 解決策
    • 必要であれば、事前に回転行列を計算しておき、繰り返し使用することで計算量を減らすことができます。
    • 並列処理 (multithreading) を検討することで、処理を高速化できる場合があります。
  • 原因
    大量のベクトルや行列を回転させる場合に、処理に時間がかかることがあります。
  1. エラーメッセージをよく読む
    エラーメッセージには、問題の原因に関するヒントが含まれています。
  2. コードを見直す
    特に、rotate!() に渡す引数の型や次元、回転角度の単位などが正しいか確認します。
  3. typeof() で変数の型を調べる
    変数の型が意図した通りになっているか確認します。
  4. println() で変数の値を出力する
    中間結果や最終結果を確認し、意図しない挙動がないか確認します。
  5. Julia のドキュメントを参照する
    LinearAlgebra.rotate!()RotMatrix の使い方について、公式ドキュメントで確認します。
  6. 最小限の再現可能な例を作成する
    問題を再現する最小限のコードを作成し、それを共有することで、他の人に助けを求めることができます。


2次元ベクトルの回転

using LinearAlgebra

# 回転させたいベクトル
v = [1.0, 0.0]

# 回転角度 (ラジアン)
theta = π/4  # 45度

# 回転行列を作成
R = RotMatrix(theta)

# ベクトルを回転
rotate!(v, R)

# 結果を表示
println("回転後のベクトル: ", v)  # [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]

# 元のベクトルを保持したい場合はコピーを作成
v_original = [1.0, 0.0]
v_rotated = rotate!(copy(v_original), R)
println("元のベクトル: ", v_original) # [1.0, 0.0]
println("回転後のベクトル: ", v_rotated) # [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]

この例では、2次元ベクトル [1.0, 0.0] を45度回転させています。 RotMatrix(theta) で回転行列を作成し、rotate!(v, R) でベクトルを回転させています。 rotate!() は破壊的な操作なので、元のベクトル v が変更されます。 コピーを作成して回転させる方法も示しています。

3次元ベクトルの回転

using LinearAlgebra

# 回転させたいベクトル
v = [1.0, 0.0, 0.0]

# 回転角度 (ラジアン)
theta = π/2

# 回転軸 (z軸周りの回転)
axis = [0.0, 0.0, 1.0]

# 回転行列を作成
R = RotMatrix(theta, axis)

# ベクトルを回転
rotate!(v, R)

# 結果を表示
println("回転後のベクトル: ", v) # [6.123233995736766e-17, 1.0, 0.0]

この例では、3次元ベクトル [1.0, 0.0, 0.0] をz軸周りに90度回転させています。 RotMatrix(theta, axis) で回転軸を指定して回転行列を作成します。

行列の回転 (各列ベクトルを回転)

using LinearAlgebra

# 回転させたい行列
A = [1.0 0.0; 0.0 1.0]

# 回転角度 (ラジアン)
theta = π/2

# 回転行列を作成
R = RotMatrix(theta)

# 行列を回転 (各列が回転)
rotate!(A, R)

# 結果を表示
println("回転後の行列: ", A) # [1.1102230246251565e-16 -1.0; 1.0 1.1102230246251565e-16]

この例では、2x2の行列 A の各列ベクトルを90度回転させています。

using LinearAlgebra

# 回転させたいベクトルの配列
vectors = [[1.0, 0.0], [0.0, 1.0], [1.0, 1.0]]

# 回転角度 (ラジアン)
theta = π/4

# 回転行列を作成
R = RotMatrix(theta)

# 各ベクトルを回転
for v in vectors
    rotate!(v, R)
    println("回転後のベクトル: ", v)
end

# 結果を表示
# 回転後のベクトル: [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]
# 回転後のベクトル: [-0.7071067811865475, 0.7071067811865476]
# 回転後のベクトル: [0.0, 1.414213562373095]
using LinearAlgebra

# 回転角度 (度数)
degrees = 30.0

# ラジアンに変換
radians = deg2rad(degrees)

# 回転行列を作成
R = RotMatrix(radians)

# 回転させたいベクトル
v = [1.0, 0.0]

# ベクトルを回転
rotate!(v, R)

println("回転後のベクトル: ", v) # [0.8660254037844386, 0.49999999999999994]


非破壊的な回転

rotate!() は破壊的な関数であり、元のベクトルや行列を直接変更します。もし元のオブジェクトを保持したい場合は、コピーを作成してから rotate!() を使用する必要があります。しかし、コピーの作成はメモリを消費し、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。非破壊的な回転を行う場合は、以下の方法があります。

using LinearAlgebra

v = [1.0, 0.0]
theta = π/4
R = RotMatrix(theta)

# 非破壊的な回転 (新しいベクトルを作成)
v_rotated = R * v  # または  v' * R' (共役複素数ベクトルに対して)

println("元のベクトル: ", v)        # [1.0, 0.0] (変わらない)
println("回転後のベクトル: ", v_rotated) # [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]

A = [1.0 0.0; 0.0 1.0]
A_rotated = R * A # または A * R' (共役複素数行列に対して)

println("元の行列: ", A) # 変わらない
println("回転後の行列: ", A_rotated)

この例では、* 演算子を使ってベクトルや行列を回転させています。 この方法は非破壊的であり、元のオブジェクトは変更されません。 共役複素数ベクトルや行列に対しては、v' (ベクトルの転置)やR' (行列の転置)を利用した計算が必要になります。

自分で回転行列を定義する

RotMatrix を使わずに、自分で回転行列を定義することもできます。 これは、特定の回転処理をカスタマイズしたい場合に便利です。

using LinearAlgebra

function rotation_matrix_2d(theta)
    return [cos(theta) -sin(theta);
            sin(theta)  cos(theta)]
end

v = [1.0, 0.0]
theta = π/4
R = rotation_matrix_2d(theta)

v_rotated = R * v

println("回転後のベクトル: ", v_rotated) # [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]

この例では、2次元の回転行列を rotation_matrix_2d 関数として定義しています。 3次元の回転行列も同様に定義できます。

アフィン変換

using LinearAlgebra

v = [1.0, 0.0]

# 回転 (45度)
theta = π/4
R = RotMatrix(theta)

# 並進 (x方向に1, y方向に2)
translation = [1.0, 2.0]

# アフィン変換
T = AffineMap(R, translation)

v_transformed = T(v)

println("変換後のベクトル: ", v_transformed) # [1.7071067811865475, 2.707106781186547]

この例では、回転と並進を組み合わせたアフィン変換を行っています。

複素数を使った2次元回転

2次元の回転は、複素数を使うと簡単に表現できます。

v = 1.0 + 0.0im  # 複素数としてベクトルを表す
theta = π/4

v_rotated = v * exp(theta * im) # 複素数の乗算で回転

println("回転後のベクトル: ", [real(v_rotated), imag(v_rotated)]) # [0.7071067811865476, 0.7071067811865475]

この例では、複素数を使って2次元ベクトルを表現し、複素数の乗算によって回転を行っています。