Julia ピボット付きQR分解 vs 通常のQR分解:違いと使い分け
QR分解とは?
まず、基本的なQR分解について簡単に触れておきましょう。QR分解は、与えられた行列 mathbfA を、直交行列 mathbfQ と上三角行列 mathbfR の積として分解するものです。つまり、
A=QR
ここで、
- mathbfR は、対角成分より下の要素がすべてゼロであるような上三角行列です。
- mathbfQ は、その列ベクトルが互いに直交し、長さが1であるような直交行列です。つまり、mathbfQTmathbfQ=mathbfI (mathbfI は単位行列)を満たします。
ピボット付きQR分解 (QRPivoted
) の特徴
通常のQR分解に対して、ピボット付きQR分解 (LinearAlgebra.QRPivoted
) では、分解の過程で列の入れ替え(ピボット選択)を行います。これにより、以下のような利点があります。
-
数値的安定性の向上
分解の各ステップで、絶対値が最も大きい(または特定の基準を満たす)列を先頭に移動させることで、小さなピボット要素による数値的な不安定さを避けることができます。 -
特異値分解との関連性
ピボット選択を行うことで、mathbfR の対角成分の絶対値が降順に並ぶ傾向があり、行列の特異値と関連付けやすくなります。特に、mathbfR の対角成分は、行列の特異値の大きさを反映します。 -
ランク落ちの判定
ピボット選択によって、線形従属な列が後方に移動しやすくなるため、行列の数値的なランクを推定するのに役立ちます。
LinearAlgebra.QRPivoted
オブジェクト
qr
関数に引数 pivot=true
を指定して行列を分解すると、QRPivoted
型のオブジェクトが返されます。このオブジェクトは、分解された要素に加えて、ピボットに関する情報も保持しています。具体的には、以下の要素にアクセスできます。
p
: ピボットのインデックスを表すベクトル。p[i]
は、元の行列のi
番目の列が分解のi
番目のステップでどの列と交換されたかを示します。P
: ピボットを表す置換行列。元の行列 mathbfA の列を mathbfP で並べ替えたものが mathbfQmathbfR に等しくなります。つまり、mathbfAmathbfP=mathbfQmathbfR。R
: 上三角行列 mathbfRQ
: 直交行列 mathbfQ
使用例
using LinearAlgebra
A = [1.0 2.0 3.0; 4.0 5.0 6.0; 7.0 8.0 9.0]
# ピボット付きQR分解を実行
qr_pivoted = qr(A, pivot=true)
# 結果の要素にアクセス
Q = qr_pivoted.Q
R = qr_pivoted.R
P = qr_pivoted.P
p = qr_pivoted.p
println("Q:")
println(Q)
println("\nR:")
println(R)
println("\nP:")
println(P)
println("\np (ピボットインデックス):")
println(p)
# 元の行列と分解された行列の積を比較(列の並べ替えを考慮)
println("\nA * P:")
println(A * P)
println("\nQ * R:")
println(Q * R)
この例では、qr(A, pivot=true)
によって行列 A
のピボット付きQR分解が行われ、その結果が qr_pivoted
に格納されます。その後、qr_pivoted
の各フィールド(Q
, R
, P
, p
)にアクセスして、分解された行列やピボット情報を確認しています。A * P
と Q * R
の結果が一致することから、ピボット処理が正しく行われていることがわかります。
型に関するエラー (TypeError, MethodError)
- トラブルシューティング
QRPivoted
オブジェクトが持つフィールド(Q
,R
,P
,p
)を確認し、目的の操作に必要な行列やベクトルを取り出してから処理を行います。- ドキュメントやヘルプ (
?LinearAlgebra.QRPivoted
) を参照し、QRPivoted
オブジェクトがどのようなメソッドやプロパティを持っているかを確認します。 - 例えば、直交行列 mathbfQ を使いたい場合は
qr_result.Q
、上三角行列 mathbfR を使いたい場合はqr_result.R
のようにアクセスします。
- 原因
QRPivoted
オブジェクトに対して、その型がサポートしていない操作を行おうとした場合に発生します。例えば、行列のように要素へのアクセスを試みたり、特定の行列演算関数に直接渡したりする場合などです。
サイズや次元に関するエラー (DimensionMismatch)
- トラブルシューティング
size()
関数などを使って、関連する行列やベクトルの形状を確認し、演算が可能かどうかを確認します。- ピボット行列 mathbfP の役割(元の行列の列の並べ替えを表す)を理解し、必要に応じて転置 (
transpose()
または'
) などの操作を行って次元を調整します。 - 例えば、元の行列 mathbfA を復元したい場合は、mathbfQRPT (または
qr_result.Q * qr_result.R * transpose(qr_result.P)
)のように計算する必要があります。
- 原因
QRPivoted
オブジェクトから取り出した行列やベクトルを使って演算を行う際に、それらのサイズや次元が一致しない場合に発生します。例えば、Q と R を掛け合わせる際に、内側の次元が合わないなどです。
ピボット処理に関する誤解
- トラブルシューティング
- ピボットインデックス
p
の意味を理解します。p[i]
は、分解後のi
番目の列が元の行列のどの列に対応していたかを示します。 - ピボット行列 mathbfP は置換行列であり、元の行列 mathbfA に対して mathbfAP=QR の関係が成り立ちます。必要な場合は、P を使って結果を元の列順に戻す操作を行います。
- ピボットインデックス
- 原因
ピボット処理が元の行列の列を並べ替えることを理解していないために、期待しない結果が得られることがあります。例えば、特定の列に対応する結果をQ
やR
から直接得ようとする場合などです。
数値的な問題
- トラブルシューティング
- 特異値分解 (
svd
) など、他の分解手法を検討します。 - 許容誤差(tolerance)などのパラメータを調整できる場合は、それを試してみます(ただし、
qr
関数自体には直接的な許容誤差の引数はありません)。 - 問題としている行列の条件数(condition number)を確認し、問題の性質を把握します。
- 特異値分解 (
- 原因
非常に悪条件の行列に対してピボット付きQR分解を適用した場合でも、数値的な不安定さや精度低下が完全に避けられるわけではありません。特に、ランク落ちに近い行列の場合に問題が発生することがあります。
Juliaのバージョンによる違い
- トラブルシューティング
- 使用しているJuliaのバージョンを確認し、対応するドキュメントを参照します。
- 可能であれば、最新の安定版にアップデートしてみることも有効な場合があります。
- 原因
Juliaのバージョンによっては、ライブラリの挙動や関数の引数などが異なる場合があります。
具体的なエラーメッセージと対応
以下に、よく見られるエラーメッセージと、それに対する一般的な対応を示します。
- DimensionMismatch("matrix A has dimensions (m, n) but matrix B has dimensions (p, q) where n != p")
QRPivoted
オブジェクトから得られた行列 (.Q
や.R
) を掛け合わせる際に、内側の次元が一致しない場合に発生します。行列のサイズを確認し、必要に応じて転置などの操作を行います。 - MethodError: no method matching *(::QRPivoted, ::Matrix{Float64})
QRPivoted
オブジェクトを行列のように直接乗算しようとした場合に発生します。分解された行列 (.Q
や.R
) を使って演算を行います。 - TypeError: non-iterable value of type QRPivoted returned
QRPivoted
オブジェクトを直接イテレートしようとした場合に発生します。.Q
や.R
などのフィールドにアクセスして、イテレート可能な行列を取り出してください。
- エラーメッセージをよく読む
エラーメッセージは、問題の原因を示唆する重要な情報を含んでいます。 - 関連する変数の型と値を確認する
typeof()
関数やprintln()
を使って、問題が発生している変数の型や値を確認します。 - ドキュメントを参照する
Juliaの公式ドキュメントや、関連する関数のヘルプ (?関数名
) を参照し、正しい使い方を確認します。 - 簡単な例で試す
問題を切り分け、簡単な行列で同様の操作を試して、挙動を理解します。
基本的なピボット付きQR分解と要素へのアクセス
using LinearAlgebra
# 適当な行列を作成
A = [1.0 2.0 3.0;
4.0 5.0 6.0;
7.0 8.0 1.0]
# ピボット付きQR分解を実行
qr_pivoted = qr(A, pivot=true)
# 分解結果の要素にアクセス
Q = qr_pivoted.Q
R = qr_pivoted.R
P = qr_pivoted.P
p = qr_pivoted.p
println("元の行列 A:")
println(A)
println("\n直交行列 Q:")
println(Q)
println("\n上三角行列 R:")
println(R)
println("\n置換行列 P:")
println(P)
println("\nピボットインデックス p:")
println(p)
# 分解の検証: A * P ≈ Q * R
println("\nA * P:")
println(A * P)
println("\nQ * R:")
println(Q * R)
println("\nA * P ≈ Q * R:", isapprox(A * P, Q * R))
この例では、まず行列 A
を定義し、qr(A, pivot=true)
関数を使ってピボット付きQR分解を実行しています。返り値である qr_pivoted
オブジェクトから、直交行列 Q
、上三角行列 R
、置換行列 P
、そしてピボットのインデックス p
にアクセスし、それぞれの内容を表示しています。最後に、元の行列 A
に置換行列 P
を右から掛けたものと、Q
と R
の積が近似的に等しいことを確認しています。
ピボットインデックス p
の利用
using LinearAlgebra
A = [1.0 2.0 3.0;
4.0 5.0 6.0;
7.0 8.0 1.0]
qr_pivoted = qr(A, pivot=true)
p = qr_pivoted.p
println("元の行列 A:")
println(A)
println("\nピボットインデックス p:")
println(p)
# 分解後の i 番目の列は、元の行列の p[i] 番目の列に対応する
println("\n分解後の最初の列 (Qの最初の列):")
println(qr_pivoted.Q[:, 1])
println("\n元の行列の p[1] 番目の列 (A[:, p[1]]):")
println(A[:, p[1]])
println("\nこれらは等しい (近似的):", isapprox(qr_pivoted.Q[:, 1], A[:, p[1]]))
println("\n分解後の2番目の列 (Qの2番目の列):")
println(qr_pivoted.Q[:, 2])
println("\n元の行列の p[2] 番目の列 (A[:, p[2]]):")
println(A[:, p[2]])
println("\nこれらは等しい (近似的):", isapprox(qr_pivoted.Q[:, 2], A[:, p[2]]))
この例では、ピボットインデックス p
が、分解後の行列 Q
の列が元の行列 A
のどの列に対応しているかを示す情報を保持していることを示しています。qr_pivoted.Q
の i
番目の列は、元の行列 A
の p[i]
番目の列(を基に生成されたベクトル)に対応します。
線形方程式系の求解への応用(ピボット処理の重要性)
using LinearAlgebra
# 特異に近い行列を作成
A = [1.0e-15 1.0;
1.0 1.0]
b = [1.0; 2.0]
# ピボットなしのQR分解で解く
qr_no_pivot = qr(A)
x_no_pivot = qr_no_pivot.R \ (qr_no_pivot.Q' * b)
println("ピボットなしのQR分解による解:")
println(x_no_pivot)
# ピボット付きQR分解で解く
qr_pivoted = qr(A, pivot=true)
x_pivoted = qr_pivoted.R \ (qr_pivoted.Q' * b)
# ピボットを考慮して解を並べ替える
x_pivoted_corrected = zeros(size(x_pivoted))
x_pivoted_corrected[qr_pivoted.p] = x_pivoted
println("\nピボット付きQR分解による解 (ピボット補正後):")
println(x_pivoted_corrected)
# 正しい解(参考)
true_x = A \ b
println("\n真の解:")
println(true_x)
この例は、ピボット処理が数値的な安定性にどのように影響するかを示しています。特異に近い行列 A
を用いて線形方程式系 mathbfAmathbfx=mathbfb を解く際に、ピボットなしのQR分解では精度が低い解が得られる可能性があります。一方、ピボット付きQR分解を用いることで、より安定した解を得ることができます。ただし、ピボット処理によって解の要素の順序が入れ替わっているため、ピボットインデックス p
を用いて解を元の順序に戻す必要があります。
最小二乗問題への応用
using LinearAlgebra
# データ点の作成
x_data = 1:5
y_data = [2.1, 3.9, 6.2, 8.1, 9.8]
# モデル: y = a*x + b
A = hcat(x_data, ones(length(x_data)))
b = y_data
# ピボット付きQR分解による最小二乗解
qr_pivoted = qr(A, pivot=true)
coefficients = qr_pivoted.R \ (qr_pivoted.Q' * b)
# 解の係数 (この場合はピボットの影響なし)
a = coefficients[1]
b_intercept = coefficients[2]
println("最小二乗法の係数:")
println("傾き a =", a)
println("切片 b =", b_intercept)
# 回帰直線のプロット (別途 plotting ライブラリが必要)
# using Plots
# plot(x_data, y_data, seriestype=:scatter, label="Data")
# plot!(x_data, a * x_data .+ b_intercept, label="Regression Line")
# gui()
この例では、ピボット付きQR分解を最小二乗問題の解法に利用しています。データ点に対して線形モデル y=ax+b を当てはめる際の係数 a と b を求めています。この例では、行列 A
の列が線形独立であるため、ピボット処理による影響はあまり見られませんが、列間に強い相関がある場合にはピボット処理が有効になります。
using LinearAlgebra
A = [1.0 2.0 3.0;
4.0 5.0 6.0;
7.0 8.0 1.0]
qr_pivoted = qr(A, pivot=true)
# 数値的ランクの推定 (Rの対角成分の大きさに基づく)
println("Rの対角成分の絶対値:")
println(abs.(diag(qr_pivoted.R)))
# 条件数の推定 (Rの対角成分の最大値と最小値の比)
condition_number_est = maximum(abs.(diag(qr_pivoted.R))) / minimum(abs.(diag(qr_pivoted.R)))
println("\n条件数の推定:", condition_number_est)
ピボットなしのQR分解 (LinearAlgebra.QR)
- 使用例
- 欠点
数値的に不安定になる可能性があり、特異値分解との関連付けは直接的ではありません。 - 利点
計算コストがわずかに低い場合があります。行列の条件が良く、数値的な安定性の問題が少ない場合には、これで十分な結果が得られることがあります。 - 説明
最も直接的な代替方法は、ピボット処理を行わない通常のQR分解 (qr(A, pivot=false)
または単にqr(A)
) を使用することです。
<!-- end list -->
using LinearAlgebra
A = [1.0 2.0; 3.0 4.0]
qr_no_pivot = qr(A)
Q = qr_no_pivot.Q
R = qr_no_pivot.R
println("ピボットなしのQR分解:")
println("Q =", Q)
println("R =", R)
println("Q * R ≈ A:", isapprox(Q * R, A))
LU分解 (LinearAlgebra.lu)
- 使用例
- 欠点
直交行列 mathbfQ が得られないため、直交性に関連する問題(例えば、射影行列の計算など)には直接的には使用できません。 - 利点
線形方程式系の求解 (A \ b
) に効率的に使用できます。ピボット選択付きLU分解は、数値的な安定性を向上させます。 - 説明
LU分解は、行列 mathbfA を下三角行列 mathbfL と上三角行列 mathbfU の積として分解する手法です。ピボット選択付きのLU分解 (lu(A)
) も利用でき、これは置換行列 mathbfP を含み、mathbfPmathbfA=mathbfLmathbfU の形になります。
using LinearAlgebra
A = [1.0 2.0; 3.0 4.0]
lu_fact = lu(A) # ピボット選択付き
L = lu_fact.L
U = lu_fact.U
P = lu_fact.P
println("LU分解:")
println("L =", L)
println("U =", U)
println("P =", P)
println("P * A ≈ L * U:", isapprox(P * A, L * U))
b = [5.0, 11.0]
x = lu_fact \ b # 線形方程式系の求解
println("線形方程式系の解 x:", x)
特異値分解 (LinearAlgebra.svd)
- 使用例
- 欠点
QR分解よりも計算コストが高い場合があります。 - 利点
行列のランク、ノルム、条件数などの重要な情報を直接的に得ることができます。劣決定系や過決定系の線形方程式の最小二乗解を求めるのに適しています。ピボット付きQR分解と同様に、数値的な安定性に優れています。 - 説明
特異値分解は、行列 mathbfA を mathbfUmathbfSigmamathbfVT の形に分解します。ここで、mathbfU と mathbfV はユニタリ行列(実数の場合は直交行列)、mathbfSigma は非負の特異値を対角成分に持つ対角行列です。
using LinearAlgebra
A = [1.0 2.0; 3.0 4.0]
svd_fact = svd(A)
U = svd_fact.U
S = Diagonal(svd_fact.S) # 特異値はベクトルで返されるため、対角行列にする
V = svd_fact.V
println("特異値分解:")
println("U =", U)
println("Σ =", S)
println("V =", V)
println("U * Σ * V' ≈ A:", isapprox(U * S * V', A))
b = [5.0, 11.0]
x_ls = svd_fact \ b # 最小二乗解
println("最小二乗解 x_ls:", x_ls)
コレスキー分解 (LinearAlgebra.cholesky)
- 使用例
- 欠点
適用できる行列が正定値エルミート行列に限られます。 - 利点
正定値対称行列に対して非常に効率的な解法を提供します。線形方程式系の求解や最小二乗問題に利用できます。 - 説明
コレスキー分解は、正定値エルミート行列(実数の場合は正定値対称行列)mathbfA を、下三角行列 mathbfL とその共役転置 mathbfLH (実数の場合は転置 mathbfLT)の積として分解する手法です(mathbfA=mathbfLmathbfLH)。ピボット選択付きのコレスキー分解は標準ライブラリにはありませんが、必要に応じて実装することができます。
using LinearAlgebra
# 正定値対称行列の例
A = [2.0 1.0; 1.0 2.0]
chol_fact = cholesky(A)
L = chol_fact.L
println("コレスキー分解:")
println("L =", L)
println("L * L' ≈ A:", isapprox(L * L', A))
b = [3.0, 3.0]
x = chol_fact \ b # 線形方程式系の求解
println("線形方程式系の解 x:", x)
反復法 (Iterative Methods)
- 使用例 (共役勾配法 - IterativeSolvers.jl パッケージが必要)
- 欠点
収束しない場合や、収束が遅い場合があります。QR分解やLU分解のような直接法とは異なり、有限回のステップで厳密な解が得られるとは限りません。 - 利点
メモリ効率が良い場合があり、大規模問題に適しています。 - 説明
ガウス-ザイデル法 (Gauss-Seidel)、ヤコビ法 (Jacobi)、共役勾配法 (Conjugate Gradient) などの反復法は、大規模な疎行列に対する線形方程式系を解く場合に有効です。
using LinearAlgebra
using IterativeSolvers
A = [4.0 -1.0 0.0; -1.0 4.0 -1.0; 0.0 -1.0 4.0]
b = [1.0, 0.0, 1.0]
x, history = cg(A, b; log=true)
println("共役勾配法による解 x:", x)
println("収束履歴:", history)
LinearAlgebra.QRPivoted
の選択理由
LinearAlgebra.QRPivoted
は、以下のような場合に特に有効です。
- 行列の数値的ランクを推定したい場合
ピボット処理によって線形従属な列が後方に移動するため。 - 劣決定系や過決定系の最小ノルム解を求めたい場合
(ただし、直接的なインターフェースはありませんが、SVDと組み合わせて利用できます)。 - 特異値分解に関連する情報を得たい場合
R
の対角成分が特異値の大きさを反映するため。 - 数値的な安定性が重要な場合
特に、条件数の大きい行列やランク落ちに近い行列を扱う場合。