【超解説】CMakeでC++コンパイラフラグをテストする3つの方法:TestCXXAcceptsFlagモジュールを超えて


TestCXXAcceptsFlag は CMake 3.0 以降で使用できるモジュールで、C++ コンパイラが特定のフラグを受け入れるかどうかをテストするために使用されます。古いバージョン (CMake 3.0 以前) では、CHECK_CXX_COMPILER_FLAG モジュールを使用していました。

使用方法

このモジュールを使用するには、以下の形式で CMakeLists.txt ファイルに記述します。

CHECK_CXX_ACCEPTS_FLAG(<flags>)

ここで、<flags> はスペースで区切られたフラグのリストです。

以下の例では、-std=c++11 フラグが C++ コンパイラによって受け入れられるかどうかをテストします。

CHECK_CXX_ACCEPTS_FLAG("-std=c++11")

結果

このモジュールは、以下のいずれかの結果を返します。

  • UNKNOWN: C++ コンパイラが指定されたフラグをサポートしているかどうかを判断できません。
  • FALSE: C++ コンパイラが指定されたフラグを受け入れません。
  • TRUE: C++ コンパイラが指定されたフラグを受け入れます。

処理の流れ

このモジュールは、以下の手順で処理を実行します。

  1. 指定されたフラグをコンパイラオプションとして追加したテストソースコードファイルを生成します。
  2. 生成されたソースファイルをコンパイルします。
  3. コンパイルが成功したかどうかを確認します。
  4. コンパイルが成功した場合、C++ コンパイラは指定されたフラグを受け入れると判断されます。
  5. コンパイルが失敗した場合、C++ コンパイラは指定されたフラグを受け入れないと判断されます。
  6. コンパイル結果が不明な場合、C++ コンパイラが指定されたフラグをサポートしているかどうかを判断できません。

利点

このモジュールを使用することで、以下の利点が得られます。

  • コード的可読性が向上します。
  • 複雑な条件分岐を記述する必要がありません。
  • C++ コンパイラが特定のフラグをサポートしているかどうかを簡単にテストできます。

注意点

このモジュールを使用する際には、以下の点に注意する必要があります。

  • このモジュールは、コンパイラのバージョンや環境によって動作が異なる場合があります。
  • このモジュールは、C++ コンパイラがサポートするフラグのみをテストできます。

TestCXXAcceptsFlag モジュールは、C++ コンパイラが特定のフラグをサポートしているかどうかをテストするためのシンプルなツールです。複雑な条件分岐を記述する必要がなく、コード的可読性が向上する利点があります。

このモジュールを使用する際には、C++ コンパイラがサポートするフラグのみをテストできること、およびコンパイラのバージョンや環境によって動作が異なる場合があることに注意する必要があります。



例1:C++11 フラグのサポート確認

cmake_minimum_required(VERSION 3.0)

project(MyProject)

CHECK_CXX_ACCEPTS_FLAG("-std=c++11")

if(CXX_COMPILER_SUPPORTS_CPLUSPLUS11)
  # C++11 フラグがサポートされている場合の処理
  add_executable(MyProgram main.cpp)
else()
  # C++11 フラグがサポートされていない場合の処理
  message(FATAL_ERROR "C++11 フラグがサポートされていません。")
endif()

このコードでは、まず cmake_minimum_required コマンドで CMake の最低バージョンを 3.0 に設定します。次に、project コマンドでプロジェクトの名前を MyProject に設定します。

そして、CHECK_CXX_ACCEPTS_FLAG モジュールを使用して -std=c++11 フラグがサポートされているかどうかをテストします。

テストの結果、CXX_COMPILER_SUPPORTS_CPLUSPLUS11 変数が TRUE になった場合は、C++11 フラグがサポートされていると判断されます。

一方、CXX_COMPILER_SUPPORTS_CPLUSPLUS11 変数が FALSE になった場合は、C++11 フラグがサポートされていないと判断されます。

C++11 フラグがサポートされている場合は、add_executable コマンドを使用して MyProgram という名前の実行可能ファイルを作成します。

一方、C++11 フラグがサポートされていない場合は、message コマンドを使用してエラーメッセージを出力します。

以下のコードは、-std=c++14 および -O3 フラグが C++ コンパイラによって受け入れられるかどうかをテストします。

cmake_minimum_required(VERSION 3.0)

project(MyProject)

CHECK_CXX_ACCEPTS_FLAG("-std=c++14 -O3")

if(CXX_COMPILER_SUPPORTS_CPLUSPLUS14 AND CXX_COMPILER_SUPPORTS_O3)
  # 両方のフラグがサポートされている場合の処理
  add_executable(MyProgram main.cpp)
else()
  # いずれかのフラグがサポートされていない場合の処理
  message(FATAL_ERROR "必要なフラグがサポートされていません。")
endif()

テストの結果、CXX_COMPILER_SUPPORTS_CPLUSPLUS14 変数と CXX_COMPILER_SUPPORTS_O3 変数の両方が TRUE になった場合は、両方のフラグがサポートされていると判断されます。

一方、いずれかの変数が FALSE になった場合は、いずれかのフラグがサポートされていないと判断されます。

一方、いずれかのフラグがサポートされていない場合は、message コマンドを使用してエラーメッセージを出力します。

これらの例はあくまでも基本的な使用方法であり、状況に応じて様々なバリエーションが考えられます。

  • 実際のプロジェクトでは、必要に応じて他のソースファイルやライブラリを追加してください。
  • 上記のコード例では、main.cpp という名前のソースファイルが存在することを前提としています。


以下に、TestCXXAcceptsFlag モジュールの代替方法として考えられるいくつかの方法をご紹介します。

コンパイラオプションを直接指定する

最も簡単な代替方法は、コンパイラオプションを直接指定する方法です。

set(CMAKE_CXX_FLAGS "${CMAKE_CXX_FLAGS} -std=c++11")

add_executable(MyProgram main.cpp)

上記の例では、-std=c++11 フラグを CMAKE_CXX_FLAGS 変数に直接追加しています。

この方法では、TestCXXAcceptsFlag モジュールを使用する必要がなくなり、コードが簡潔になります。

ただし、この方法では、コンパイラがフラグをサポートしているかどうかを明示的に確認することはできません。

TRY_COMPILE マクロを使用する

TRY_COMPILE マクロを使用すると、コンパイラが特定のコードをコンパイルできるかどうかをテストすることができます。

try_compile(RESULT test_code main.cpp)

if(RESULT)
  # コンパイル成功
  add_executable(MyProgram main.cpp)
else()
  # コンパイル失敗
  message(FATAL_ERROR "コンパイルが失敗しました。")
endif()

上記の例では、TRY_COMPILE マクロを使用して main.cpp ファイルをコンパイルできるかどうかをテストしています。

テストの結果、コンパイルが成功した場合は、RESULT 変数が TRUE になります。一方、コンパイルが失敗した場合は、RESULT 変数が FALSE になります。

RESULT 変数の値に基づいて、後続の処理を実行することができます。

この方法では、コンパイラがフラグをサポートしているかどうかを明示的に確認することはできませんが、より柔軟な処理が可能になります。

CMAKE_CXX_COMPILER_ID 変数を使用する

CMAKE_CXX_COMPILER_ID 変数には、使用している C++ コンパイラの ID が格納されています。

この変数を使用して、コンパイラの種類を判別し、それに応じてフラグを設定することができます。

if(CMAKE_CXX_COMPILER_ID MATCHES "GNU")
  set(CMAKE_CXX_FLAGS "${CMAKE_CXX_FLAGS} -std=c++11")
else()
  # GCC 以外のコンパイラの場合
  set(CMAKE_CXX_FLAGS "${CMAKE_CXX_FLAGS} -std=c++14")
endif()

add_executable(MyProgram main.cpp)

上記の例では、CMAKE_CXX_COMPILER_ID 変数を使用して、使用しているコンパイラが GCC かどうかを判別しています。

この方法では、コンパイラの種類ごとに異なるフラグを設定することができます。

ただし、すべてのコンパイラの ID が網羅されているわけではないことに注意する必要があります。

外部スクリプトを使用する

より複雑な処理が必要な場合は、外部スクリプトを使用する方法があります。

例えば、コンパイラが特定のフラグをサポートしているかどうかを判断するために、シェルスクリプトを使用することができます。

set(CMAKE_REQUIRED_PROCESSES test_compiler_flag)
set(TEST_COMPILER_FLAG_SCRIPT "${CMAKE_SOURCE_DIR}/test_compiler_flag.sh")

external_program(test_compiler_flag
  COMMAND ${TEST_COMPILER_FLAG_SCRIPT} "-std=c++11"
  OUTPUT_VARIABLE TEST_COMPILER_FLAG_RESULT
  RETURN_CODE TEST_COMPILER_FLAG_RETVAL)

if(TEST_COMPILER_FLAG_RETVAL EQUAL 0)
  # コンパイラがフラグをサポートしている
  set(CMAKE_CXX_FLAGS "${CMAKE_CXX_FLAGS} -std=c++11")
else()
  # コンパイラがフラグをサポートしていない
  message(FATAL_ERROR "コンパイラがフラグをサポートしていません。")
endif()

add_executable(MyProgram main.cpp)