C++ Qt GUI開発:QFileDialog::nameFilters() を使ったファイルフィルタの実装
もう少し詳しく説明します
-
nameFilters() 関数
この関数をQFileDialog
オブジェクトに対して呼び出すと、現在ダイアログに設定されているファイルフィルタのリストがQStringList
型で返ってきます。QStringList
は、文字列のリストを扱うための Qt のクラスです。 -
QFileDialog クラス
Qt で標準的に提供される、ファイルを開いたり保存したりするためのダイアログを表示するためのクラスです。 -
ファイル名フィルタとは (ファイルフィルタ)
ファイルダイアログで、特定の種類のファイルのみを表示したり、選択できるようにするための仕組みです。例えば、「画像ファイル (*.png .jpg)」や「テキストファイル (.txt)」といった形式で指定されます。
具体例
例えば、以下のようなコードでファイルダイアログを作成し、複数のファイルフィルタを設定したとします。
QFileDialog dialog(this);
dialog.setNameFilters(QStringList() << "画像ファイル (*.png *.jpg)" << "テキストファイル (*.txt)" << "すべてのファイル (*)");
この状態で dialog.nameFilters()
を呼び出すと、次のような QStringList
が返ってきます。
{"画像ファイル (*.png *.jpg)", "テキストファイル (*.txt)", "すべてのファイル (*)"}
この関数が役立つ場面
一般的なエラーとトラブルシューティング
-
- 原因
setNameFilters()
でフィルタを設定する際に、記述ミスがある可能性があります。例えば、ワイルドカード (*
) の使い方や、フィルタ名の形式が正しくないなどが考えられます。 - トラブルシューティング
setNameFilters()
に渡しているQStringList
の内容を注意深く確認してください。- フィルタの形式は
"説明 (*.拡張子1 *.拡張子2 ...)"
のようになっているか確認してください。 - 複数のフィルタを
QStringList
に追加する際には、各フィルタが正しく独立した文字列として追加されているか確認してください。
- 原因
-
nameFilters() の結果が空のリストである
- 原因
setNameFilters()
が一度も呼び出されていない、または空のQStringList
が渡された可能性があります。 - トラブルシューティング
- ファイルダイアログを表示する前に、必ず
setNameFilters()
を呼び出してフィルタを設定しているか確認してください。 - 意図的にフィルタを削除したい場合は
clearNameFilters()
関数を使用することを検討してください。
- ファイルダイアログを表示する前に、必ず
- 原因
-
フィルタの順序が期待通りでない
- 原因
setNameFilters()
に渡したQStringList
の順序がそのままnameFilters()
の結果として返されます。 - トラブルシューティング
setNameFilters()
に渡すQStringList
の要素の順序を確認し、必要であれば並べ替えてください。- ダイアログ上でのフィルタの表示順序は、通常このリストの順序に従います。
- 原因
-
特定のプラットフォームでフィルタの挙動が異なる
- 原因
ファイルダイアログのネイティブな実装はプラットフォームによって異なるため、フィルタの挙動に微妙な違いが生じることがあります。 - トラブルシューティング
- 異なるプラットフォームでアプリケーションをテストし、フィルタの挙動に差異がないか確認してください。
- もし問題がある場合は、プラットフォーム固有の処理を検討する必要があるかもしれません。ただし、
QFileDialog
はプラットフォーム間の差異を吸収するように設計されているため、通常はあまり意識する必要はありません。
- 原因
-
ユーザーが選択したフィルタを取得したいのに nameFilters() を使用している
- 原因
nameFilters()
は設定されているフィルタのリストを返す関数であり、ユーザーが実際に選択したフィルタを知るためのものではありません。 - トラブルシューティング
- ユーザーが選択したフィルタを取得するには、ダイアログが
accept()
された後にselectedNameFilter()
関数を使用してください。
- ユーザーが選択したフィルタを取得するには、ダイアログが
- 原因
-
ワイルドカード (*) の挙動に関する誤解
- 原因
ワイルドカードの*
は、その位置にある任意の数の文字にマッチします。.
(ドット) も通常の文字として扱われます。 - トラブルシューティング
- 特定の拡張子のみにマッチさせたい場合は、
"*.拡張子"
のように記述します。 - 複数の拡張子を指定する場合は、
"*.拡張子1 *.拡張子2"
のようにスペースで区切ります。
- 特定の拡張子のみにマッチさせたい場合は、
- 原因
より複雑なトラブルシューティング
- Qt のドキュメント参照
QFileDialog
および関連する関数の公式ドキュメントを参照し、正確な使用方法や注意点を確認してください。 - デバッグ
qDebug()
を使用して、setNameFilters()
に渡しているQStringList
の内容や、nameFilters()
が返すリストの内容をログ出力して確認することが有効です。
例1: 設定されたファイルフィルタの一覧を表示する
この例では、QFileDialog
を作成し、いくつかのファイルフィルタを設定した後、nameFilters()
を使ってそれらのフィルタの一覧を取得し、コンソールに出力します。
#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QFileDialog dialog;
dialog.setWindowTitle("ファイルを開く");
dialog.setFileMode(QFileDialog::AnyFile);
// ファイルフィルタを設定
QStringList filters;
filters << "画像ファイル (*.png *.jpg *.jpeg)"
<< "テキストファイル (*.txt)"
<< "すべてのファイル (*)";
dialog.setNameFilters(filters);
// 設定されたファイルフィルタを取得して表示
QStringList currentFilters = dialog.nameFilters();
qDebug() << "設定されたファイルフィルタ:";
for (const QString &filter : currentFilters) {
qDebug() << "- " << filter;
}
// ダイアログを表示 (ここでは結果は使用しない)
dialog.exec();
return a.exec();
}
この例のポイント
- ループ処理で
currentFilters
の各要素(各ファイルフィルタの文字列)をqDebug()
で出力しています。 dialog.nameFilters();
を呼び出すことで、現在設定されているフィルタのQStringList
がcurrentFilters
に返されます。dialog.setNameFilters(filters);
で、作成したフィルタのリストをQFileDialog
に設定しています。filters << "..." << "..." << "...";
で複数のファイルフィルタをリストに追加しています。QStringList filters;
でファイルフィルタを格納するリストを作成しています。
例2: 既存のファイルダイアログのフィルタを取得する
この例では、すでに表示されている QFileDialog
オブジェクトから、現在のファイルフィルタを取得して表示します。
#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QFileDialog dialog;
dialog.setWindowTitle("ファイルを保存");
dialog.setAcceptMode(QFileDialog::AcceptSave);
// 初期フィルタを設定
dialog.setNameFilters(QStringList() << "テキストファイル (*.txt)" << "すべてのファイル (*)");
if (dialog.exec() == QDialog::Accepted) {
QString selectedFile = dialog.selectedFiles().first();
qDebug() << "選択されたファイル:" << selectedFile;
// ダイアログが閉じられた後でも、フィルタを取得できる
QStringList currentFilters = dialog.nameFilters();
qDebug() << "\n保存ダイアログに設定されていたファイルフィルタ:";
for (const QString &filter : currentFilters) {
qDebug() << "- " << filter;
}
}
return a.exec();
}
この例のポイント
- ダイアログが表示され、ユーザーが操作した後でも、
nameFilters()
を呼び出すことで、その時点に設定されていたフィルタのリストを取得できます。
例3: フィルタが設定されていない場合の nameFilters()
の挙動
この例では、setNameFilters()
を一度も呼び出さずに nameFilters()
を呼び出すとどうなるかを確認します。
#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QFileDialog dialog;
dialog.setWindowTitle("ディレクトリを選択");
dialog.setFileMode(QFileDialog::DirectoryOnly);
// setNameFilters() は呼び出さない
// 設定されていない場合のファイルフィルタを取得して表示
QStringList currentFilters = dialog.nameFilters();
qDebug() << "ファイルフィルタ (設定なし):";
if (currentFilters.isEmpty()) {
qDebug() << "リストは空です。";
} else {
for (const QString &filter : currentFilters) {
qDebug() << "- " << filter;
}
}
dialog.exec();
return a.exec();
}
setNameFilters()
が呼び出されていない場合、nameFilters()
は空のQStringList
を返します。
setNameFilter(const QString &filter) を使用して単一のフィルタを設定する
複数のフィルタを一度に設定する setNameFilters(const QStringList &filters)
の代わりに、setNameFilter(const QString &filter)
を複数回呼び出すことで、個々のフィルタを設定できます。
#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QFileDialog dialog;
dialog.setWindowTitle("ファイルを開く");
dialog.setFileMode(QFileDialog::AnyFile);
// 単一のフィルタを個別に設定
dialog.setNameFilter("画像ファイル (*.png *.jpg)");
dialog.setNameFilter("テキストファイル (*.txt)");
dialog.setNameFilter("すべてのファイル (*)");
// 設定されたフィルタを確認
qDebug() << "設定されたファイルフィルタ:";
QStringList currentFilters = dialog.nameFilters();
for (const QString &filter : currentFilters) {
qDebug() << "- " << filter;
}
dialog.exec();
return a.exec();
}
この方法の利点
- フィルタを一つずつ追加できるため、動的にフィルタを構築する場合などに便利です。
setNameFilter(const QString &filter) に複数のパターンを含む文字列を設定する
setNameFilter()
に、スペースで区切られた複数のファイルパターンを含む単一の文字列を渡すこともできます。
#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QFileDialog dialog;
dialog.setWindowTitle("画像またはテキストファイルを開く");
dialog.setFileMode(QFileDialog::AnyFile);
// 複数のパターンを一つの文字列で設定
dialog.setNameFilter("画像ファイル (*.png *.jpg);;テキストファイル (*.txt);;すべてのファイル (*)");
// 設定されたフィルタを確認
qDebug() << "設定されたファイルフィルタ:";
QStringList currentFilters = dialog.nameFilters();
for (const QString &filter : currentFilters) {
qDebug() << "- " << filter;
}
dialog.exec();
return a.exec();
}
注意点
setNameFilters()
を使用する場合とは区切り文字が異なるため注意が必要です。- この方法では、フィルタ名とパターンを
;;
(セミコロン2つ) で区切る必要があります。
フィルタのクリアと再設定
既存のフィルタをすべて削除し、新しいフィルタを設定したい場合は、clearNameFilters()
関数を使用できます。
#include <QApplication>
#include <QFileDialog>
#include <QStringList>
#include <QDebug>
int main(int argc, char *argv[])
{
QApplication a(argc, argv);
QFileDialog dialog;
dialog.setWindowTitle("ファイルを操作");
dialog.setFileMode(QFileDialog::AnyFile);
// 初期フィルタを設定
dialog.setNameFilters(QStringList() << "初期フィルタ (*.init)");
qDebug() << "初期フィルタ:" << dialog.nameFilters();
// 既存のフィルタをクリア
dialog.clearNameFilters();
qDebug() << "フィルタをクリア後:" << dialog.nameFilters();
// 新しいフィルタを設定
dialog.setNameFilters(QStringList() << "新しいフィルタ1 (*.new1)" << "新しいフィルタ2 (*.new2)");
qDebug() << "新しいフィルタ設定後:" << dialog.nameFilters();
dialog.exec();
return a.exec();
}
この方法の利点
- フィルタを完全に置き換えたい場合に便利です。
フィルタリングを行わない
ファイルダイアログで特定のファイル形式のみを表示する必要がない場合、setNameFilters()
を呼び出さずに、すべてのファイルを表示するデフォルトの動作を使用することも「代替」の一つと言えます。この場合、nameFilters()
を呼び出すと空のリストが返ります。
カスタムのファイルダイアログを作成する (より高度な代替)
QFileDialog
の提供する標準的なファイルダイアログではなく、QListView
や QFileSystemModel
などの Qt のビューとモデルのクラスを組み合わせて、完全にカスタムのファイルダイアログを作成することも可能です。この場合、ファイルフィルタリングのロジックも独自に実装する必要があります。
この方法の利点
- 非常に柔軟なUIとフィルタリングの仕組みを実装できます。
- 標準のファイルダイアログが提供する機能(プラットフォームごとのネイティブなルックアンドフィール、標準的な操作性など)を自力で実装する必要があります。
- 実装が複雑になり、多くのコーディングが必要になります。