numpy.select()関数の代替方法
NumPy ライブラリには numpy.select()
という関数があり、条件に応じて配列の要素を選択できます。
仕組み
default
(オプション): すべての条件が False だった場合に、出力に追加される値です。 デフォルトは 0 です。choicelist
(選択リスト): こちらも配列のリストで、condlist
と同じ長さが必要です。 各配列は、condlist
の対応する条件が True になった場合に、そこから要素が選ばれる候補の配列になります。condlist
(条件リスト): ブーリアン型の配列のリストです。 それぞれの配列は、出力要素がどの選択リストから取られるかを決定する条件を表します。
条件が複数成立した場合
condlist
の中で、最初に True になった条件 が選択に使用されます。
例
import numpy as np
# 配列を作成
arr = np.arange(8) # [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7]
# 条件リストと選択リストを作成
condlist = [arr < 3, arr > 4] # [True, True, True, True, False, False, False, False]
choicelist = [arr, arr * 3] # [[0, 1, 2], [0, 3, 6, 9]]
# numpy.select() を実行
result = np.select(condlist, choicelist)
print(result) # [0, 1, 2, 0, 0, 12, 18, 24]
この例では、
- 4 以下の要素はそのまま残り、5 を超える要素は 3 倍された値になります。
arr
の要素が 4 を超える (arr > 4
) の場合は、arr
の要素を 3 倍した配列 (arr * 3
) から要素が選ばれます。arr
の要素が 3 未満 (arr < 3
) の場合は、arr
そのまま (arr
) から要素が選ばれます。
- すべての条件が False になった場合は、
default
が出力に追加されます。 - 同じ要素に対して複数の条件が True になったとしても、最初に True になった条件が優先されます。
condlist
とchoicelist
の長さは一致させる必要があります。
numpy.select()
関数は便利ですが、使い方によってはエラーが発生することがあります。ここでは、よくあるエラーとその解決方法を見てみましょう。
条件式の型 (dtype) 不一致
condlist
(条件リスト) の要素は ブール型 (bool) である必要があります。もし数値型 (int) や文字列型 (str) など違う型が混ざっていると、次のようなエラーが発生します。
TypeError: invalid entry in condlist: should be boolean ndarray
解決方法
- 条件式を評価した結果がブール型になるようにしてください。
- 数値同士の比較なら
==
,!=
,<
,>
,<=
,>=
を使って比較式を作成します。 - 論理演算が必要なら
&
(and),|
(or),~
(not) を使います。
- 数値同士の比較なら
条件リストと選択リストの長さ不一致
condlist
(条件リスト) と choicelist
(選択リスト) の長さは 一致 させる必要があります。 長さが違うと次のようなエラーが発生します。
ValueError: Length of condlist does not equal length of choicelist
解決方法
- 条件が 1 つしかない場合は、
condlist
とchoicelist
もそれぞれ 1 つの要素のリストにするか、スカラー値 (単一の値) を使えます。 condlist
とchoicelist
の要素数を揃えましょう。
出力データ型の不一致
choicelist
の各配列の型 (dtype) が 揃っていない 場合、次のようなエラーが発生することがあります。
ValueError: operands could not be broadcast together with shapes ... (shape mismatch)
解決方法
choicelist
の各配列の型を揃えてください。- 全ての配列を同じ型に変換するか、型が統一できるような値 (例えば数値型同士なら共通の最小/最大値) を選択肢にしてください。
デフォルト値の型不一致
default
オプションで指定する値の型が、出力データ型と 一致しない 場合にもエラーが発生することがあります。
解決方法
default
の型を出力データ型に揃えてください。
デバッグのヒント
エラーが発生した場合は、次のように中間結果を出力することで原因を特定しやすくなります。
# 条件を個別に評価してみる
for cond in condlist:
print(cond) # 各条件が True/False を確認
# 選択肢の中身を確認する
for choice in choicelist:
print(choice) # 選択肢の配列の中身を確認
例 1: 単純な条件分岐
この例では、配列 arr
の要素が 5 より小さい場合はそのまま、それ以外は 2 倍の値になるように numpy.select()
を使います。
import numpy as np
arr = np.arange(10) # [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9]
condlist = [arr < 5] # [True, True, True, True, True, False, False, False, False, False]
choicelist = [arr, arr * 2] # [[0, 1, 2, 3, 4], [10, 12, 14, 16, 18]]
result = np.select(condlist, choicelist)
print(result) # [0, 1, 2, 3, 4, 10, 12, 14, 16, 18]
例 2: 複数の条件分岐
この例では、配列 arr
の要素が 3 未満の場合は 0、3 以上 5 以下の場合は 1、それ以外は 2 になるように numpy.select()
を使います。
import numpy as np
arr = np.arange(8) # [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7]
condlist = [arr < 3, arr <= 5, arr > 5] # [[True, True, True], [True, True, False], [False, False, True]]
choicelist = [0, 1, 2] # [0, 1, 2]
result = np.select(condlist, choicelist)
print(result) # [0, 0, 0, 1, 1, 1, 2, 2]
例 3: デフォルト値の設定
この例では、配列 arr
の要素が偶数であればそのまま、奇数であれば -1 になるように numpy.select()
を使います。 ただし、arr
の要素が 3 以上の場合は考慮しないように、デフォルト値として 3 を設定します。
import numpy as np
arr = np.arange(7) # [0, 1, 2, 3, 4, 5, 6]
condlist = [arr % 2 == 0] # [True, False, True, False, True, False, True]
choicelist = [arr, -1] # [[0, 1, 2, 3, 4, 5, 6], [-1, -1, -1, -1, -1, -1, -1]]
default = 3
result = np.select(condlist, choicelist, default)
print(result) # [0, -1, 2, 3, 4, -1, 6]
numpy.select()
は条件分岐による配列操作に便利ですが、状況によっては他の方法がより読みやすく効率的になる場合もあります。 ここでは numpy.select()
の代替手段をご紹介します。
np.where() による条件分岐
np.where()
関数は、条件に応じて要素を選択する別の方法です。 numpy.select()
に比べて、よりシンプルな条件分岐に適しています。
import numpy as np
arr = np.arange(10)
# 条件分岐 (numpy.select() と同じ処理)
result_where = np.where(arr < 5, arr, arr * 2)
print(result_where) # [0, 1, 2, 3, 4, 10, 12, 14, 16, 18]
リスト内包表記 (list comprehension)
リスト内包表記を使うと、条件分岐による新しい配列を生成できます。 配列の要素ごとに条件を評価し、それに応じた値を生成します。
import numpy as np
arr = np.arange(10)
# 条件分岐 (numpy.select() と同じ処理)
result_list = [x * 2 if x >= 5 else x for x in arr]
result_list = np.array(result_list) # NumPy 配列に変換
print(result_list) # [0, 1, 2, 3, 4, 10, 12, 14, 16, 18]
if-else 文による分岐 (複雑な条件分岐の場合)
複数の条件が絡み合い、処理が複雑になる場合は、従来の if-else 文を用いた分岐処理が適しています。 numpy.select()
よりも柔軟に条件を記述できます。
import numpy as np
arr = np.arange(8)
# 条件分岐 (numpy.select() と同じ処理)
result_if = np.empty_like(arr) # 結果を入れる空の配列を作成
for i in range(len(arr)):
if arr[i] < 3:
result_if[i] = 0
elif arr[i] <= 5:
result_if[i] = 1
else:
result_if[i] = 2
print(result_if) # [0, 0, 0, 1, 1, 1, 2, 2]
- 読みやすさやコードの簡潔さを重視する場合は、
numpy.select()
を選択しても良いでしょう。 - 複雑な条件分岐や、条件分岐以外の処理も絡む場合は、リスト内包表記や if-else 文が適しています。
- 単純な条件分岐であれば、
np.where()
が読みやすく効率的です。